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エッセイ・コラム 芸術・芸能・音楽

ブラジル・シンドローム?

西川 武彦

 筆者が良く利用する図書館が、何かのイベントで客寄せのため、手持ちの古いヴィデオを放出したことがあった。東北での大災害が起きる一ヶ月前だったろうか。吝嗇な筆者は3本を鷲掴みにして持ち帰った。「永遠と一日」「アルフィー」「チャイナ・シンドローム」である。いずれも筆者は観ていなかったのだ。そのうちの一本 “The China Syndrome” を昨夜観て驚いた。アメリカの地方の原子力発電所で発生した想定外の事故をめぐる映画である。1979年3月16日に米国で公開された。なんとその12日後にペンシルバニア州スリーマイル島原子力発電所で大事故が起きる。それもあって、この映画は大ヒット。シンドロームという言葉が流行した。ジェーン・フォンダ、ジャック・レモン、マイケル・ダグラスなどが主な出演者で、同年のアカデミー賞で主演男優賞、主演女優賞、美術賞、脚本賞などにノミネートされている。
 ご存知の方も多いと思うが、キンバリー・ウエルズ(ジェーン・フォンダ)というアメリカの地方テレビ局の女性リポーターが、ある日原子力発電所のドキュメンタリー取材と行なったときに発電所でトラブルが発生。同行したカメラマンが撮影禁止の場所で内緒に撮ったコントロールルームの様子から、事件が絡んでいく。発電所の原発管理者・ジャック・ゴデル(ジャック・レモン)は、計器の表示の誤りに気付き、炉心溶融などの大惨事を免れていた。安全基準資料の確認、トラブルに繋がる重大な証拠の発見……。賛成派・反対派のせめぎあい。新しい原子力発電所の建築を控えて、利益優先の経営者、建築会社、エトセトラの陰湿で悪質な隠蔽、追跡。優れたサスペンションアクション映画だろう。
 タイトルは「中国症候群」とでも訳すのだろうか。アメリカの原子力発電所がメルトダウンすると、地球を突き抜けて中国まで融けてしまうのでは、ということらしい。わが国の反対側は南米とか聞いている。となると、これがわが国なら、「ブラジル・シンドローム」?

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