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エッセイ・コラム 政治・経済・社会

今、何をすれば良いのですか

高口 恵子

 春のゴールデンウィークもあと一日で終わろうとしている。
 例年であれば、高速道路の渋滞状況とか海外からの帰国者へのインタビューがテレビ画面を賑わす。
 しかし、今年は違う。この休みを利用して多くのボランティアが東北地方へ行った。
 「震災復興」という名のもとに。
 一方、自衛隊という職業がある。かれらは任務として「震災復興」に務めている。過酷な任務の遂行中に、自衛隊員が精神的に疲弊しても業務を放り出すわけにはいかない。荒地と化した広大な大地や数多くの犠牲者たちと向き合う作業が、連日のように続く。仕事だから当然と、私にはとてもいえない。彼らも心ある人間だ。
 さらに、福島原発、1号機、2号機、3号機、4号機。もう耳慣れた響きだ。そして、ここにも自分の身を挺して任務に携わっている、社員や協力会社の作業者がいる。防護服を身にまとい、一日でも早く原子炉が修復するように、日夜戦っている。
 その彼らの任務の終了を、愛する家族が首を長くして待っている。
 この方たちのことを考えると、時々テレビで見る評論家の発言が虚しくなってくる。
 なかには、何故こんなことになる前にもっと早く原子力発電を見直さなかったのかと、人ごとのように言い放つ識者もいる。
 ある番組が、ドイツの理工系の学生に今回の震災への思いを尋ねた時、「原子力発電はよくないと思う。しかし、悔しいことに、それに代わる案を考え出せない。だから、もっと研究して、何とか原子力発電に代わるものを作り出したい。」と言った。
 私の結論はこうだ。
 ボランティア活動と任務。評論家とドイツの学生。
 いずれも、「震災復興」の名のもとにある人間の姿であり、言動であるが、本質が違う。それを心に刻んでおくことが大切なのだと思う。

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