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エッセイ・コラム 日常生活雑感

半田そうめん

田谷 英浩

 そうめんの美味しい季節になった。この時季になると徳島の友人から半田そうめんが贈られてくる。うどんと言うにはやや細い。そうめんと言うには太すぎる。1・3ミリの半田そうめんはもちもちしていてコシが強く、のど越しもよい。
 茹でた麺を冷水にしめて、めんつゆにつけ、刻み葱、おろし生姜、ミョウガなどの薬味を加えればもう最高である。暑さで食欲がない時でもツルツルっと美味しく食べられる。
 今では徳島県を代表する特産品になっている半田そうめんの生れは大和の三輪。吉野川の川舟の船頭たちによって伝えられた。彼らは作り易いように三輪そうめんよりもかなり太くした。それが受け継がれ、いま半田そうめんは日本一太いそうめんといわれている。
 そうめんは小麦粉と食塩と水をよく混ぜてよく練り、食用植物油を塗り、よりをかけながら引き延ばして、熟成を繰り返し乾燥させる。このねじりながら延ばすことで、麺はしなやかな強さになる。引き延ばし作業はすべて手作業で、数回の延ばし作業や熟成時間、その後の干し時間は農林規格(JAS)に定められている。
 麺の種類は太さによって分けられる。そうめんは1・7ミリ未満、ひやむぎは1・3ミリから1・7ミリ、うどんは1・7ミリ以上である。そばに規定はない。
 不思議な事にそうめんとひやむぎに同じ太さの範囲がある。一時期農水省はそうめんの太さを1・3ミリ以下にしようとしたらしいが、1・3ミリ以上が主流の半田そうめんはそれでは「半田ひやむぎ」になってしまうと業者が猛反発した。
 寒い冬につくられたそうめんは「寒そうめん」といわれ特に珍重される。十月から翌年三月に製麺したものを「寒製」と表示し、冬至から翌年2月のものは「極寒製」と表示される。冬季の低温と乾燥した空気が、庭先に干されている麺のコシと旨味を増すのである。二㍍くらいに延ばされ白い簾のように垂れ下がったこの庭先の風景は門干し(かどぼし)といわれ、徳島県美馬郡半田の風物詩になっている。

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