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エッセイ・コラム スポーツ

「なでしこJAPAN」世界一の勝因

都甲 昌利

 2011年7月17日、サッカーの日本女子代表“なでしこジャパン”が、ドイツ・フランクフルトで女子ワールドカップ(W杯)決勝戦を戦い、PK戦の末に米国を破って初の世界一の座に就いた。その余韻は国民栄誉受賞によりまだまだ続いている。
 この勝利については、サッカー関係の専門家や評論家たちが様々な観点から分析をして世界一になった原因を解説している。いわく、「あきらめない心」、「沢選手との連係プレイ」、「監督の采配」、「リーダーがしっかりしている」その他もろもろ。
 そういう分析はすべて正しいと思うが、私はもっと他に原因があるのではないかと思っている。

 第一に開催国がドイツであったこと。ドイツはかって第二次世界大戦で日本と同盟を結び、アメリカ、フランス、オランダ、イギリスと戦って敗れた。もし、開催国がフランスやオランダであったら恐らくあのような成績は収めることが出来なかったであろう。昭和天皇がオランダを訪問された時、民衆からタマゴを投げつけられた。この出来事は遠い過去のことで現在の若者は関係がないと言った意見もあろうが、若者でも学校や親達から学習はしているはずである。
 スポーツ競技の勝利には「ニューマ」が必要だ。競技場の雰囲気というか「気」である。何万という観衆の大部分は日本チームを応援したと思う。

 第二に初戦でドイツを破ったことである。強力なドイツを破ったのだから世界一になってもらいたというドイツ人観衆の気持ちがあった。日本が直ぐ敗退したら「何故あんな弱いチームに負けたのか」と非難される。ドイツ人は何な何でも日本に世界一になってもらいたいのだ。

第三にアメリカの油断があった。日本と戦ってこれまで一度も負けたことがない、今回も楽勝だという精神的ゆるみがあった。日本が点を入れた時、あの慌てようは画面から伝わってきた。勝負は常に相対的である。相手が弱かったから勝つことがある。強かったからではない。次回は2012年のロンドン・オリンピックが控えている。世界一を維持することは大変なことだ。頂上に登ったら降りるしかない。オリンピックで金メダルを獲得して初めてなでしこJAPANは世界一と言える。

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