NRC(米原子力規制委員会)の議事録公開
2月末、NRCが昨年の3月11日から10日間の内部記録を公開した。FOIA(情報自由法)に基づいたものとか。日本では、政府が各種会議の議事録も作成していないことが判明した直後だけに、彼我の国の記録に対する考え方の相違が明らかになった。会議以外の通話・会話、メールの記録等も含まれて、3200頁に及ぶという。
新聞・テレビの短い報道からだけでもいくつかのことが読みとれた。NRCでは、予想される最悪の事態は何かを、常にオープンに検討している。それに対して日本の政府・東電の発表は、最悪の事態は何かとは決して言わず、事故を小さく見せようとする姿勢が目立ったこと。住民の避難という点でも、日米の問題意識の強弱があぶり出された。NRCでは、16日に半径50マイルからの避難を勧告したのは、情報がまだ不確かではあるが決断したことを明らかにしている。人々の安全第一という姿勢が鮮明であり、日本政府の住民避難の指示が後手を踏み続けたのとは大違いであることも分かった。
公開後数日経って、知人のKさんからメールが届き、アメリカの情報公開について教えてくれた。
メールを読んで思わず唸った。NRC内における記録は、NRC当局が行うのではなく、当事者の記録の改ざんを防ぐため、民間会社に委託されるという。今回は議事録作成会社(Court Reporter & Transcriber)とおぼしきNEAL.R.GROSSが行っている。一方で、この記録についてのNRCの「免責条項(DISCLAIMER)」が掲げられ、記録の編集には関わっていないこと、もし誤記があってもそれは受託会社のせいだと念を押している。作成方法のあまりにオープンなことにも驚いた。
Kさんはさらに続けて、FOIAが生まれた背景を教えてくれた。1962年キューバ危機の際、大統領執務室に入れた録音テープが、後に役立ったことを契機として、1966年に制定された由。
キューバ危機から今年で50年、やはりアメリカには半世紀にわたる情報の記録と公開の歴史があったのである。
(註)
- NRCの記録
http://pbadupws.nrc.gov/docs/ML1205/ML120520264.html - FOIA(Freedom of Information Act 情報自由法)
- EFOI(Electronic Freedom of Information Amendments of 1996)
電子媒体に保存の記録も公開の対象と明示した法改正。 - 日本の「情報公開法」2001年施行。 電子媒体に保存の記録については触れられていない。
(平成24年3月7日)