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エッセイ・コラム

ちょっと可笑しなこと

西川 武彦

第一話:
 このところ数年、NHKの朝ドラを欠かさない。今の世相からタイムスリップして、筆者が育った時代に引き戻してくれるから嬉しいのだ。
『梅子先生』もよい。筆者が1960年代に羽田空港に勤務している頃、「放課後」に通った当時の蒲田辺りが舞台なので懐かしい。
 最近聴力が衰えたらしく、画面の会話が聞きづらいことがあり、老妻に「今なんていったのだ」と質して嫌がられる。ところが今朝のことだが、画面に字幕が出るではないか。これを追いながら観れば全く不自由しないことが分かった。「NHKも味なサービスをするなあ」と、感涙にむせぶ思いで呟くと、「そんな話聴いていないわよ」と、老妻はそっけない。
 手元にあった入力切替器を、老眼鏡をかけて見直してはたと気がついた。間違えて「字幕」を押していたのだ。朝CNNを観るのが習慣になって久しいが、普通の状態では日本語が「主」になっているので、「音声切換」を押して「副」の英語に切り替える。ところが、今朝は、そこからチャネルをNHKに切り替える際、手元が狂って「字幕」を押していたようなのだ。災い転じて福?もっとも楽するとまた聴力が衰えるかもしれないが……。

第二話:
 コンビニが益々便利になったので、炎天下、遠出を嫌って最寄りの店で買い物を済ませてしまうことが多い。アルコールも各種揃っているから、貯蔵が底をつくと慌てて足を運ぶのだが、レジでビールを見せると、勘定する前に「ここをタッチして下さい」と左横の液晶画面を指すではないか。「勘定の仕方が変わったのか」と、訝りながら画面を覗くと、「私は20歳を超えています」という意味の表示が出ている。これをタッチしないと買わせてくれないようだ。
 毎回これをやられるから嫌になる。バーコードの白髪頭の後期高齢者に対して失礼極まりない。納得がいかない、と隠居は呟いている。

 もっとも、家に戻って、その昔海外で求めて楽しんでいた『Playboy Magazine』を、ネットで探りだして、気まぐれに眺めようとすると、「18歳以上でないと見られません」といった画面が現れ、“IAgree”と、“I am not over 18” とあって、選択を迫られる。覗きたいと思って開くのだから、罰則があるわけではないし、後者をクリックする奴はいないと思うのだが、いかがなものであろう。

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