関東地方に雪
1月14日は予報よりも大雪に、2月6日は予報より小雪というより、首都圏では空振り。「関東地方に雪」の予報は難しいという天気予報の定説通りになりました。
関東地方に雪が降るのは、南岸低気圧といって、太平洋岸を東進する低気圧が第一の要件です。これ以外に関東に雪が降る可能性はまずありません。
南岸低気圧が雨を降らせ、この低気圧に向かって北側から寒気が吹き込んで気温を下げる事で雪になる、というのが関東地方の雪のメカニズムです。
南岸低気圧の位置が北、即ち陸地に近過ぎると低気圧自身は低温ではないので、雨は降るものの、雪の要件である地上気温1度以下にはなりません。岸から遠すぎると、気温は下がるものの、雨量不足で雪が降ったと認識されるには至りません。低気圧の位置に加えて強さも重要で、どの位の降水量になり、どの位寒気を引き込むかの決定要因になります。
さらに、ご想像の通り、低気圧の要因のみならず、北側にある寒気の強さも重要で、どの位の気温でどのくらいの気圧でどのくらいの速度で移動しているのか、というのも南岸にある低気圧に吹き込む寒気の量と温度に影響します。
つまり、関東地方に雨が降るという要件と、気温が下がるという要件が、全く別の要因であるところに予報の難しさがあります。
関東地方に雪は、その応用問題も含めて気象予報士試験の実技に何年に一度かは出される常連問題です。
ところで、首都圏に雪というと、昭和11年2月26日の2.26事件を思い起こす方も多いと思います。降りしきる雪と2.26事件は切っても切れない仲です。
気象庁の記録によると、2月26日の雪の降り始めは午前8時8分。重臣邸や警視庁、陸軍省などへの襲撃の蹶起軍は午前4時に一斉に行動開始、5時10分には終わっていたと言われるので、襲撃時には雪は降っていませんでした。
しかし、2月23日には都心で35.5センチという観測史上3番目の雪が降り、2月26日の朝には12センチ残っていたという記録があります。日陰や道路脇にはうず高い残雪があったと思われます。
従って、蹶起軍の行動開始時には雪は地上にあったが、降ってはいなかった。しかし、新国会議事堂(まだ使われていませんでした)周辺や外堀通りにピケットラインを敷く蹶起軍の背後には雪が降っていた。というのが正解です。2月26日の雪もかなりの大雪で、日没時には旧雪と合わせて25センチ近い積雪になっていたといいます。