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エッセイ・コラム

HUG

松谷 隆

 HUGを英和辞典で引くと、①しっかりと抱きしめる②(信念などを)一途に守るなどがでている。つい先日、横浜市のある地域ケア・プラザからボランティア活動感謝昼食会に招待されたときに知ったHUGは目から鱗だった。

「ハグをやってもらいます」という。まさか挨拶でハグもないだろうと思っていると「テーブルごとの4グループでのゲームです」。
 これは静岡県西部危機管理局が開発し、ローマ字表記の頭文字を取ってHUGと命名した「避難所運営ゲーム」である。災害時に避難所を運営する立場になったとき、それをどのように運営するかを疑似体験できるゲームだ。

 小学校が避難所で、その体育館に避難してくる住民ひとりずつの状況、災害対策本部からの指示、伝達事項、避難者の要望、トイレやペットの問題などを記入したイベントカード250枚のうち、時間の関係で半分に取り組む。1枚目から迅速かつ適格に解決せねばならない。なおこのカードはおとな1人あたり横1.5㍍、縦2㍍の場所の割り当てにも使える。このほかに、小学校と体育館の配置図、サインペン等々が用意されている。

 筆者のグループは7名で、カードの読み手1人、残りをスタッフとした。次に、受付場所の設定と30㍍×20㍍の体育館のフロアーを通路と収容地区の区分けし、地区ごとに避難者を割り振ることにした。次々と処理を進めるうち、毛布200枚の救援物資が5分後到着とのカードがでた。保管場所の決定と同時に、校庭に歩道、車道、私有車と公用車の駐車場、ペットのつなぎ場の区分けをした。
 体育館の区分けは各グループがしており大差なし。しかし、校庭の区分けをしたのは、我がグループだけで、評価された。

 このハグで、避難者の状況はそれぞれ複雑であり、要求も千差万別であることを痛感した。しかし、この疑似体験が役に立つ日が来ないことを願っている。
 そして、阪神大震災をはじめとする災害時に避難所の運営に当たられた方々の努力と忍耐強さに改めて敬意を表します。またこのハグを準備していただいた地域ケア・プラザの配慮に感謝します。
(開発元のURL: www.pref.shizuoka.jp/bousai/seibu/index.html

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