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エッセイ・コラム

日曜日の公園

黒澤 弘子

 さわやかな十月に入ったある日、
「次の日曜日、井の頭公園へ行きませんか。11時、吉祥寺駅集合」
 と、カメラの仲間から連絡があった。
 久しぶりの井の頭公園だ。撮影には都合のつく人だけが参加すればいいとの話し合いで、誰に会えるかいつも楽しみに出かけていく。ところが、今回集合時間の思い違いで、11時に慌てて家を出た。
 京王線井の頭公園駅で下車する。お天気がいい。子供たちの歓声があふれるなか、重いカメラを肩に掛けるとひょうたん橋を渡った。池の小波が日を受けキラキラ眩しい。ボートの水を掻く櫂の音や鳥の啼く声が、美しいハーモニーのように聞こえてくる。仲間へ居場所の連絡を済ませると、木漏れ日の池畔を中央に架かる七井橋へ向かって歩き出した。
 すると、何処からともなく軽快なメロディーが聞こえてきた。先方を見ると、右手の広場でギターを弾き、ハーモニカのようなものを首から掛け、腰にスピーカーを下げた小柄な男性が、一人でバンド演奏を奏で歌っている。曲名を知っているわけではないが、なぜか懐かしい。テネシイワルツがブルースのリズムで奏でられたとき、思わず膝で調子をとり、若き日を思い出していた。
 20~30分も留まっていたであろうか。その間、スナップ写真を何枚か撮らせてもらった。日焼けした肌にオレンジ色のランニングシャツとGパン、薄い色の帽子をかぶりネックレスも付けて演じられたパフォーマンスは、私たち観客を十二分に楽しませてくれたのである。
 七井橋を渡り、井の頭自然文化園前の広場へ着くと、仲間の男性三人と女性一人がベンチに腰掛け、楽しそうに缶ビールを飲みながら待っていてくれた。

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