映画 The Railway ManとBBCドキュメンタリー
来る4月19日から日本で公開の映画『レイルウェイ・運命の旅路』(原作名:The Railway Man)を外国で先に見ました。
この映画は第二次大戦中シンガポールで日本軍の捕虜になり、泰国とビルマ(現ミヤンマー)をむすぶ鉄道建設の難工事に従事させられたEric Lomax の自伝にもとづいて作られています。
泰緬鉄道に関する今までの外国の映画・書籍などは、一部の自伝を除くと誇張が多く、例えば有名な映画「クワイ川の橋」はほとんどフイクションですが、この映画はほぼ史実にそっています。
Lomax とその捕虜仲間の英国兵はラジオを隠しもっていたことで、日本軍憲兵隊のひどい拷問を受け、そのトラウマが結婚した戦後もずっと続いており、奥さんを悩ませていました。
一方泰緬鉄道憲兵隊の通訳をしていた長瀬は、しばしば拷問の現場にも立ち会って捕虜に自白を強要していました。
Lomax は戦後しばらくしてから、泰緬鉄道跡で長瀬と会い、初めは怒りをぶつけていたが、和解してゆくところで映画は終わります。
映画では英兵捕虜が憲兵隊にひどい拷問を受けている様子が何回も出てきて、日本バッシングのようにもみえます。しかし実際に憲兵隊の厳しい取り調や拷問をうけたのは、疑いがかけられた少数の英兵で、大多数の捕虜は鉄道連隊の指図に従って、過酷でない通常レベルの労働をおこなっていたのです。
英国人には1万人もの捕虜が死亡したのは日本軍の暴行・虐待によって殺されたと思っている人がいますが、実際にはほとんどすべての死亡はコレラなど熱帯病によるものでした。
これらの状況の詳しくは拙著「泰緬鉄道の人間模様」(電子版・でじたる書房)をご覧ください。
私はLomaxと長瀬の両人と面識があり映画には特に関心があります。長瀬は捕虜や現地労務者の鎮魂のために数十回タイを訪れています。
英国人には捕虜虐待から日本に反感を持っている人がいますが、この映画をみて「この蛮行は忘れられないが、赦す」という和解の心境になってもらいたいのです。
日本人にもこの映画を見て、外国人の方が関心と反感の高い泰緬鉄道について、理解を深めてほしいと思っています。
ドキュメンタリー番組“Moving Half the Mountain” は4月1日英国BBC4で放映されました。この番組は、英国兵がシンガポールで日本軍の捕虜になり、貨車におしこまれて山奥の泰緬鉄道の建設現場に送り込まれ、不十分な設備ももとで労働に従事さされ、日本の敗戦により解放されるまでの経過を、日英双方の証言を交えて描写しています。日本側の証言をかなりとりいれるなど、日本バッシングでない公平な立場で作られています。
この番組を作ったHelen Langridgeが、私が外国人の日本に対する誤解をすこしでも正したいと思って自費出版したBuilding the Burma-Thailand Railwayを読んでいたことから、私もインタービューを受け、若干のカットが番組に取り入れられました。