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エッセイ・コラム

相撲は美しい伝統文化なり

西川 武彦

 11月の九州場所は、白鵬が大鵬に並ぶ32回目の優勝を飾って閉幕した。見事である。
 見事は美事とも書く。TVで観る白鵬は、力士として完成した美しい肉体の持ち主だ。白い肌はきめこまかく、引き締まっている。怪我がないからだろう、手首に巻く肌色に近いサポーターのほかは、ほとんど何も付けていないのが素晴らしい。

 相撲は、細かいルールで様式化されたスポーツとなっているが、古代から続く日本の伝統文化である。演劇と同じで、大枚を払って観て楽しむ興行でもあるのだ。桟敷では重箱をつつき、盃を交わしながら観戦する。
 ところが、近年では、国籍にかかわらず、力士の大半が、白や茶系の太い包帯、大きなバンドエイドとか太いサポーター類などを、ところ構わずといってよいほど、べたべたと巻いたり、張って土俵に上がる。汚らしく、見苦しい。
 上位力士で代表的なのは、相撲巧者の安美錦。足などほとんどが包帯だけだ。いっそのこと体操選手の白いズボンを穿かせたらいかがなものか。横綱の日馬富士もかなりのレベルだ。「貼無富士」とでも改名させたいくらいだ。
 逆に美しい方の例では、今場所久しぶりに勝ち越した遠藤が素晴らしい。肌も綺麗だ。

 美しいといえば、九州場所には色っぽい楽しみが一つある。素敵な和服を、15日間、日替わりでお召しになり、同じ升席で観戦する三十路の中ほどと思しき美人がいるのだ。当クラブにもフアンが何人かいて、飲み会で話題に上る。ネットで調べたところ、中州でスナックを経営するママさんと判明。お店の名前は「田じま」。美女は田島恵美子さん。
 昨年までは、TV画面にほどよく収まっていて、必ず美形を拝めたものだ。たまに日曜日など、黒い洋装に替えて現われると、さては今夜は……、などと疑う始末である。
 ところが、今場所は同じところには見かけないのだ。なぜか画面がぼやけるので、視力に問題があるのかもしれない。慌てて、眼科に飛び込んだ。女医さんである。
 着物姿が見えなくなったとはいえないので、昨年手術した白内障のチェックという名目で診てもらう。結果は問題なし。心なしか土俵がはっきり見える感じになった。
 同じ日の会合で、仲間が「今場所から席が移ったようですよ、少し観にくいけど、席は……」と、詳しく教えてくれた。ストーカーなど、身の危険を感じたのだろうか、と後期高齢者の隠居はつぶやいている。

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