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エッセイ・コラム

福岡へ移り住む

大平 忠

 来年の3月に、横浜の東戸塚から息子の住む福岡市へ家内と二人移り住むことにした。福岡市の東端、香椎浜という海辺である。建設中のマンションを見て部屋も決めた。今住んでいるマンションの売却、浅間山麓にある山荘の処分も終った。後は、引越しの準備、といってもひたすら捨てる作業を半年かけてやらなければならない。もっとも、これが一番厄介で考えるだけでも頭が痛い。
 昨年私が心房細動、年明けて家内が帯状疱疹に罹った。二人同時に病気になったらどうなるか、そのとき考えた。やはり子どもの傍でないと不安である。そこで、二人で検討した結果、福岡行きとなったのである。
 長女が調布に住んでいる。ところが、買い物、駅(又はバス停)、各種病院、この三つが近いというところで探すと適当な物件が無い。いいとなると、高価格で手が出ない。意外に東京は不便でままならないことに気がついた。一方、息子が福岡はどうだと言って来た。
 確かに、福岡は東京、横浜と違ってコンパクトシティである。昔から、ワンメーターでどこにでも行けると言われていた。香椎浜の建設中のマンションからは、スーパーまで2分、バス停まで2分、医院、病院は歩いていけるところに一通り揃っている。博多駅、市の中心・天神までバスで20分、飛行場も近い。しかもマンションの価格も手頃であった。福岡は諸事東京圏に比べて庶民には住み易いようだ。
 とはいえ、問題はある。友人がいないことである。飲み仲間がいない。昔6年北九州で働いたことがあり、北九州まで行くと友人は数名いる。年寄りは三つの組織とか集団に首を突っ込んでいないと早く呆けるそうだ。それが心配だ。ただ、家内曰く、東京、横浜は飲み仲間があまりに多過ぎて、身体も家計ももちそうにないから丁度いいわと言う。新しい輪を地元の地域で作って行くしかあるまい。ボランティアも探してみようかと思う。
 福岡・香椎浜もいいことばかりが待っている訳ではなく、予期せぬ問題も起きることだろう。しかし、私たちが福岡行きを決めてから、東京圏の後期高齢者は今後激増し介護の施設と手が廻らないと政府が発表した。政府は高齢者は地方への移住ということも考えて欲しいと言う。移住という言葉には、遠い異国に行くような響きがある。私たちは福岡へ行くのはそんなに大袈裟なことではないと思う。飛行機で一時間半ちょっと飛んだところへ移り住むだけである。
 福岡で住んでの住み心地はどうなのか、向こうへ行ってから、ときどきこのエッセイコラムに「福岡・香椎浜便り」を送ろうかと考えている。果たして皆さんの参考になるかどうか、さっぱり分りませんが。

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