ノウゼンカズラ・サルスベリ・キョウチクトウ
今年の夏は猛暑だった。猛暑とはいえ、早朝あるいは夕方散歩は努めてした。散歩をしていて気がついたことがある。それは、猛暑というのに例年よりたくさん咲いている花があることだ。
一つはノウゼンカズラ(凌霄花)である。この花は住んでいる東戸塚近辺では、7月と8月になぜか2度花が咲く。しかし、8月は7月に比べて花数は少なく、ちらほらとしか咲かない。ところが今年は、7月ほど多くはないが例年以上にたくさん咲いている。お陰で散歩の楽しみが増えた。この花の漢字は、調べると「霄(そら)を凌(しの)ぐ」という意味らしい。青い空にオレンジ色の燃えるような花々が舞うように咲いている姿は実に見事である。
二つ目は、サルスベリ(百日紅)である。30年前に住んでいた家にも植えてあった。でも、こんなに咲いているのは記憶にない。サルスベリの枝がせり出した下に小さな池があった。この枝に止まったカワセミが、池の金魚を咥えていったことがある。サルスベリを見ると思い出す。この木の幹はいかにも滑りそうで、そこからサルスベリと言われているのは分かる。しかし、漢字はなぜ百日紅なのか。呼び名と書き表す漢字がまったく違う意味なのも面白い。
三つ目は、キョウチクトウ(夾竹桃)である。50年前に勤務していた福岡・黒崎の工場にはキョウチクトウが広い工場のそこかしこに植えてあった。当時の化学工場は、隣の製鉄工場と同じく、まだまだ空気が清浄とはいい難かった。その厳しい環境でもこのキョウチクトウは元気に毎年真っ赤な花を咲かせていた。暑い日にこの花を眺めると、ますます暑さがつのる思いがした。小学生のころ、『夾竹桃の花咲けば』という佐藤紅緑の少女小説を読んだ。なにも覚えていないが、この花には少女小説の感傷はまったく感じない。佐藤紅緑にはこの花にまつわる何かいい思い出があったに違いない。
さて、来年も猛暑だとすると、また花をたくさんつけるのだろうか、あるいは今年咲き過ぎたので木は疲れてしまい咲かないかもしれない。しかし、来年の夏はこの東戸塚ではなく九州の香椎浜で海を眺めている筈である。誰かに教えて貰うことにしよう。