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エッセイ・コラム

安倍首相のヤジ

清水 勝

 テレビで国会中継を観ていると、与野党ともヤジを飛ばしている。都議会でセクハラのヤジがあり、議員の皆さんは十分留意していると思っていたが、そうでもないようだ。機智に飛んだヤジや皆が笑えるヤジなら、雰囲気を和らげる効果もあるが、直接的な非難のヤジでは議論を深めることにはならない。静かに聴いて、ゆっくり反論すればいい。
 そんなことは百も承知の安倍首相がヤジを飛ばしたとは俄かに信じられない。しかし、それが事実であるところに現日本の総理大臣のレベルの低さが露呈されている。安保法案に全力尽くし、日本の安全を守るとしたこの人で、本当に日本の将来を委ねていいのだろうか。
 2月19日、衆議院予算委員会で玉木雄一郎議員(民主:元大蔵財務官僚)が西川農水相の砂糖業界からの寄付金について質問をした際に、余り関係のない「日教組!」と叫ぶようなヤジを飛ばしたのは、誰あろう答弁側に座っていた安倍首相であった。
 この後、二人の激しいやり取りがあり、それを見兼ねた大島委員長から「いやいや、総理、総理、ちょっと静かに」と制したにもかかわらずヤジを飛ばす安倍首相に、再び大島委員長が「あの、ヤジ同士のやり取りしないで…総理もチョット」。如何にも先生に注意されている小学児童のような感じだ。これが日本の総理大臣、情けなや!
 5月28日の衆議院平和安全法制特別委員会で、辻元清美議員(民主)が中谷防衛相への質問に、自説を長々と述べていたことに安倍首相は我慢がならず、「早く質問しろよ!」とヤジを飛ばした。同席していた自民党の議員がヤジるのなら判らないでもないが、首相自らがヤジったのである。反対意見を聴くことができない、余裕のない駄々っ子のような首相は如何にも哀れである。
 さらに安保関連法案の大詰めを迎えていた8月21日の参議院特別委員会でも安倍首相はヤジを飛ばした。蓮舫議員(民主)の質問をしている最中に「そんなこといいじゃないか」とヤジった。これには鴻池委員長も堪らず「自席での発言は控えて頂きたい」と注意しているのだ。
 これら3回の首相のヤジに対して自民党の良識ある議員はどう思っているのだろうか。自民党総裁選挙に誰一人立候補しない状況から察すると、安倍首相の我が儘な、思いのままの党運営を黙ったまま認めていることになるのが残念である。
 安倍首相は通常の演説ではまともなことを言っているものの、これらのヤジこそが彼の本質ではないのだろうか。反対意見をねじ伏せるかのような我が儘、駄々っ子、己を制止できない我慢不足と、その背景にある三代続いた政治家一家の驕り高ぶりではないだろうか。悲劇!

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