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エッセイ・コラム

フォルクスワーゲンの不愉快な偽装CM

大越 浩平

 十一月に入ると、VWのテレビCMが流れ新聞に全面広告が出た。企業イメージ戦略だ。その全文。

 今回の一連の問題に関しまして、皆様にはご心配をおかけしています。
今後も、新たな事実が判明次第、速やかに日本の皆様に情報をお届けして参ります。

 また、すべてのオーナー様には安心してよりよいカーライフをお楽しみ頂くためにお持ちのフォルクスワーゲン車を無料で点検させて頂きます。

 そして、新規ご購入のお客様には、快適をお約束する、5年間のメンテナンスフリーをご提供致します。

 今後、フォルクスワーゲンは、少しでも皆様の信頼を取り戻せますよう、出来る限りの努力をしていきます。とある。

 さっと目を通し、不愉快な気分になった。この皆様とは一体誰なのか。VWのしでかした経済活動は、企業と国際社会との約束を経営者が偽装した。この事は地球環境の破壊を意味し、地球 生物 人類に対する犯罪だ。その意識と反省、今後の対応がみえない、する気もないのだろう。偽装CMだ。

 資本主義発展途上での手探り状況の時代ならともかく、成熟した資本主義国家で、超優良な世界企業が起こしたモラル欠如の経営、この根は深い。グローバルと称して、企業は拡張し続け、国民、国家、地球より企業の繁栄を優先させる経営者。21世紀の世界大企業に広がる経営者のモラル欠如性悪性腫瘍患者だ。

 典型的な患者は原発事業者。使用済み核燃料の放射能除去処理も未解決、廃棄場所も決まらぬまま、次々と原発を稼働させている。事故が起これば、一国のみならず全生物と地球に惨事が起こることを経営者は知っている。まさにモラル欠如性悪性腫瘍に罹患している(更に原発事故の怖いところは、それは国家の最高機密で隠蔽されることだ)。

 21世紀の経営者は、需要環境の変化、環境破壊による生態系の混乱、貧困の格差拡大による多様化する紛争をしっかり見つめ、毅然とした企業経営の品格が求められる。

 それらを自覚しなければ資本主義と人類は自滅する。

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