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エッセイ・コラム

小京都物語

清水 勝

 観光で人気があるのは京都です。歴史的な建造物や寺社が多く、伝統的な祭りや行事があり、四季折々の風景が楽しめますので、訪れる人が多いのは納得です。
 そんな京都に憧れたのは昔の人も同じだったようで、京都の公家からお姫様を迎え、姫の歓心を買おうと京都らしい雰囲気を採り入れた街にした大名もいました。また、不本意ながらも京都を追われ、住んだ土地で京都に似た街づくりをした人もいたのです。こうした歴史を背景にして「小京都」と呼ばれる街は全国に多くあります。
 代表的な街としては、「みちのくの小京都 角館」(秋田県)、「越後の小京都 加茂」(新潟県)、「飛騨の小京都 高山」(岐阜県)、「但馬の小京都 出石」(兵庫県)、「山陰の小京都 津和野」(島根県)、「安芸の小京都 竹原」(広島県)、「伊予の小京都 大洲」(愛媛県)、「土佐の小京都 中村」(高知県)、「九州の小京都 飫肥」(宮崎県)等々数多くあります。
 それらの小京都と呼ばれる地域が集まり、観光宣伝に役立てようと「全国京都会議」が結成されています。その加盟基準は、①京都と似た自然と景観 ②京都との歴史的なつながり ③伝統的な産業と芸能があること 以上の3つのいずれか1つ以上に合致し、常任幹事会で承認されれば加盟できるようです。
 現在は47都市が加盟していますが、小京都と名乗らなくても観光でやっていけると脱退する都市や、加盟しなくても観光地として定着しているから大丈夫だという都市もあります。弘法大使と所縁があり、竹林のある「伊豆の小京都 修善寺」は伊豆市に合併した関係からか、加盟していないのは残念に思います。
 私の旅の拘りのひとつに「小京都巡り」があります。既に30近くの小京都を訪問しています。名所旧跡を訪ねるのは当然ですが、出来るだけ地元の人で溢れる居酒屋にも行くようにしています。そして、折角の小京都を訪ねたのですから、その旅行記代わりに、その土地に絡めて、創作した人物を登場させ、「掌編小説勉強会」で発表しています。駄作ながらも小京都シリーズ17編を書きました。
 予てから、折角書いたものを記録に残すべく本にしたいと思っておりました。自費出版は費用がかさみますが、私製本だと安い費用で印刷・製本ができると知り、少部数ですが冊子を作ってみました。
 小京都を舞台に若者の恋あり、失恋あり、生き方あり、をテーマに『小京都物語〔青春篇〕』とし、「和菓子と素麺の青春譜」(龍野)、「三人の津和野」「きまつしてきばる」(近江八幡)、「竹原かぐや姫」の4作品です。表紙は満開の桜が石庭に映る京都・竜安寺の下手ながらも写真を取り込みました。ペンネーム小道周帆の初めての冊子を手に取ると、自己満足ながら、いい気分です。
 書くことの好きな皆さんも私製本を作られては如何ですか。大丈夫、小遣い程度で可能ですよ。

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