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エッセイ・コラム

トルコが危ない!

森田 晃司

 トルコが危ないです。トルコで不可思議なことが連続しています。昨年11月、シリアとの国境付近でロシア軍機が領空侵犯の廉でトルコ軍に撃墜されましたが、その背景は闇の中で、トルコ軍の中に不穏分子がいることを窺わせました。
 中東では比較的治安が良く安定していると見られてきたトルコですが、このロシア軍機撃墜の前後からテロ事件が頻発しています。イスタンブールでも何度かテロが発生、今年の6月28日には空港で40名近くが亡くなる大規模なテロがあり、そこへ、今度は7月16日のクーデター未遂騒ぎです。きな臭い事件が連続して発生しています。
 勿論、隣国シリアの混乱が影響しています。米国にシリア領内のIS攻撃の為の基地を、昨年来トルコが提供していることについても激しい反発があります。また、イラク・シリア更には自国内に展開しているクルド民族との長年の対立もあります。紛争の種はあります。それにしても、安定していたトルコの治安が危機に瀕しています。
 明治23年9月、日本を訪問中だったトルコの戦艦エルトウールル号が、和歌山沖で台風に遭遇して転覆し、600名近くの犠牲者が出ました。しかし、住民の危険を顧みない必死の救助活動で69名のトルコ兵士が生還しました。
 日本では語られなくなったこの美談はトルコでは今も大切に語り継がれ、感謝され、イラン・イラク戦争でテヘランに残された250名の日本人をトルコ政府が救出してくれたほどです。
 現政権下でも安倍首相・エルドアン大統領は何度も会談して信頼関係を深めてきています。

 エルドアン大統領は民族の歴史を重視する姿勢を示す一方、イスラエルとの正常化交渉も進めて中東の和平へリーダーシップを発揮しており、影響力を失った米国に替わって、ロシアのプーチン首相と共にその存在感が目立ってきています。
 今回のクーデター事件の報道は、クーデターと云う武力で権力を奪取しようという非道な不法行為にはほとんど触れずに、クーデターを未遂に終わらせ、その勢力を一掃しようというエルドアン大統領が独裁的、強権的、非民主的だとの非難ばかりが際立つ極めて偏向したものとなっています。この偏向報道は、逆に、このクーデターが単にトルコ軍内部の対立から起こったものではなく、外部からの大きな圧力によることを窺わせるものです。

 思えば“アラブの春”と称賛された中東の革命の嵐は、エジプトやリビヤの既存の権力を破壊することには成功しましたが、無残な混乱を残して住民を苦しめています。
 “シリアのアサド政権は非民主的”と決めつけて、内政干渉して、混乱と難民を産み出して収拾がつかなくなっています。
 さらに遡ってみれば、第一次世界大戦では、中東を支配していたオスマン・トルコが戦乱に巻き込まれた上で解体され、中東は欧州列強の恣意のままに切り裂かれて分断され、今日の中東不安定の因となりました。
 中東に和平と秩序を取り戻そうとする勢力に対して、これを阻止しようとする勢力が存在しています。トルコに奇怪な事件が連続しています。

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