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エッセイ・コラム

単一民族幻想

西川 武彦

 大阪なおみ、ダニエル太郎、高安、ケンブリッジ飛鳥、ベイカー茉秋……。小生が最近知ったハーフの著名な日本人です。このほか、リオ五輪で活躍した選手にも多数います。
 血が混じると概して優秀になるようです。
 Anyway、日本でも混血が当たり前の時代になりました。自分とは違った顔かたちの人たちが、普通に日本語で喋り、同じ生活仕種をする時代になったのです。

 政治の世界でも、流れが変わり、台湾の血が入った民進党の蓮舫党首が日本の首相になるかもしれません。世界を見回せば、ハワイ生まれのオバマさんは、父親がケニア系で、母親は白人の米国人。フランスの大統領だったサルコジさんは、母親がユダヤ系ハンガリー移民の二世です。ロンドン市長は、パキスタン移民の二世で、イスラム教徒です。その他、拾い集めれば限りがないでしょう。時勢が変わったのです。

 高度成長を極めて成熟した日本は、物価も安定し、安全で清潔、過ごし易く、住み易いのでしょう、国の予想をはるかに上回る伸び率で、訪日する外国人が急増しています。
 半年、一年とロングステイし、そのまま定住する人も増えた。これらの事象は、豊かさに溺れて人口減が避けられない社会では、労働力確保や諸機能維持のためにも望ましいのではないでしょうか。

 そんなことを考えていたところ、9月19日、国連総会と並行してニューヨークで開かれた国連難民サミットで、わがジャパンの首相は、「難民問題の解決のために主導的役割を果たす」と演説したうえで、今後三年間で28億ドル(約2850億円)の拠出を表明しました。
 日本は移民・難民の受け入れが極端に少なすぎ、国際的責任を果たしていないと批判されているなか、またまたお金です。これが「主導的役割」といえるでしょうか?
 案の定、欧米のサイトでは、ほとんどが批判的で、「湾岸戦争を思い出す」「移民を受け入れない代償」「国連安保理の席を買うための代償」などの書き込みにあふれた、と新聞で報じられていました。
 シリアだけでも、2011年に始まった内戦で、人口約2200万の半数以上が家を追われて難民になり、500万近くが周辺国に、さらには、EU圏に逃れたといわれています。
 多々、種々問題を抱えながら、(英国を含め)EU加盟国は、大小の差はあれ、万単位、数十万単位で受け入れています。
 日本はどうかといえば、5月の伊勢志摩サミットで、5年間にシリア人留学生150人の受け入れを表明しただけと聞きます。昨年、シリア人を含めて7586人の難民申請に対し、27人しか認めなかったと、海外でも冷笑的に報じられたとか(東京新聞9月22日)。

 同じ先進国仲間とはいえ、欧米と異なり、「単一民族幻想」がはびこり、蓮舫さんの「重国籍」が騒がれるジャパンです。朝ドラのトト姉ちゃんに倣って、「どうしたもんじゃろのう」と、ご隠居は、老いてやせ細った首を傾げて呟いております。

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