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エッセイ・コラム

日露の安全保障

森田 晃司

 2017年も、早くも年の瀬が迫ってきました。今年も色々ありましたが、日本を取り巻く国際環境も大きく変化しています。英国のBREXITでは反グローバリズムの動きが鮮明になりました。続いて米国でも、ドナルド・トランプ氏が、醜いまでの大手メディアのネガティブキャンペーンにもかかわらず、大統領選挙に勝利しました。トランプ氏はアメリカの利益第一主義を訴え、グローバリズムを牽引するユダヤ系金融資本に反旗を翻すことで支持を得てきましたが、政権運営の実効を上げるために、女婿のクシュナ―氏を窓口に金融資本との妥協を図っていくことになるのでしょう。若くてやり手と伝えられるクシュナ―氏は、驚いたことにユダヤ人だそうで、新政権のキーマンになるとの予測がもっぱらです。大方の予想に反して米国の株価が急上昇していることは、両者の話し合いが順調に進んでいる証左かもしれません。
 現実的な路線への習性が行われるとはいえ、しゃにむにグローバリズムを推し進めてきた従来の政策は見直され、新政権がナショナリズムへの回帰を目指すのは間違いなさそうです。日米関係も大きく変わります。“米国の核の傘”と云う上下の提携から、独立した両大国の水平の同盟に変化するチャンスが訪れるかもしれません。路線修正が続く中で、TPPに関しては公約通りの撤退を明言しています。アジアの諸国にアメリカの貿易ルールを押し付けるのが本質のTPPを米国が自らひっこめてくれるなら、日本にとっては、本音としては、大歓迎です。
 また、トランプ氏は、米露は二百年前の南北戦争の時からの友好国だと言っており、米露関係が大きく改善されるとすれば、日露の平和条約の締結に向けて追い風となります。
 プーチン大統領の12月15日の来日が間近に迫ってきました。安倍・プーチンの両首脳はこれまで15度にわたって会談を重ねてきました。しかも、通訳だけを交えた二人だけの会談を繰り返して、互いの理解と信頼を深めてきました。去る11月19日には15度目の会談をAPECの集まりを利用して行っています。安倍・プーチン両首脳の会談後のコメントは厳しいものでした。ロシアの要求が高くなり交渉の見通しは暗いとの報道が目立ちます。しかし、妥結前には要求を引き上げるのが外交交渉の常套手段です。ロシアは、或いは、大きな決断をする段階に入ってきているのかもしれません。
 交渉の妥結は単に経済と領土を取引することではなくて、両国の安全保障に大きく寄与することになるとは元ウクライナ大使の馬渕睦夫さんの以前からのご指摘です。東アジアの情勢も太平洋の情勢も大きく変化することになります。日本の未来が大きく開けることになります。日本の而立に向けての画期的な歩みとなります。中国や朝鮮半島の不穏な動きは続いているものの、日本を取り巻く環境は劇的に好転しようとしています。この機会をつかめるかどうかは日本人の良識と頑張りにかかっています。

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