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エッセイ・コラム

平成28年 歴史的出来事が相次いだ年

森田 晃司

 今年は歴史的な出来事が相次いで、取り分けて瞬く間に過ぎた一年でした。
 昨年11月にパリで同時多発テロが発生し、今年は年明けから欧州および中東の各地などでテロが相次ぎました。年の瀬に入っても12月19日、トルコの首都アンカラでロシア大使が、白昼、式典でスピーチ中に銃殺されるという衝撃的なテロまで発生し、更に、同日の夜には比較的大規模テロの少なかったドイツのベルリンでもクリスマスマーケットにトラックが突っ込み60名ほどの死傷者が出ました。テロに始まり、テロに終わった一年で、今や、テロは日常化し、テロに対して報復の戦闘を宣言することも当たり前となりました。
 難民も後を絶たなくなりました。2010年、チュニジアに端を発した“アラブの春”と称される暴力的革命が中東各国で連鎖的に発生して既存の政権が打倒されて以来、中東各地は混乱を極めており、豊かさと安定を求める難民の欧州への流れが止まりません。国境をなくして、ヒト、モノ、カネの流れを自由にしようというグローバリズムの当然の帰結とも思えますが、難民の受け入れに抗う動きもBREXIT を始めとして鮮明になってきています。
 今年の出来事の際立った特徴は、こうした情勢を背景に、共産主義に代って世界の思想を先導してきたグローバリズムに対する疑念が行動となって表れたことです。
 6月のBREXITは世界に活を入れる英国民の選択でした。11月の米国大統領選挙では、メディアの醜いネガティブキャンペーンにも関わらず、トランプ候補が圧勝しました。グローバリズムの本尊とも言える英米にて、拡大の一途をたどっていたグローバリズムの潮目が変わったことを告げる歴史的な出来事でした。
 しかし、トルコでは依然として不可思議な動きが続いています。主な事件だけでも、2015年11月のトルコ軍機によるロシア軍機の撃墜、トルコ各地でのテロの続発、トルコのクーデター未遂、今回のロシア大使の暗殺と続いています。これほど露骨にして執拗にロシアとトルコの離反あるいは抗争を画策している勢力があります。グローバリズムと反グローバリズムのせめぎ合いはまだ始まったばかりと云うべきかもしれません。
 日本を巡っても歴史的な出来事が相次ぎました。5月には伊勢志摩サミットが開催され、安倍首相がリーダシップを示しましたが、G7の首脳が揃って日本の伝統文化の象徴とも云える伊勢神宮を訪問されました。また、その際に米国現職大統領の広島訪問も実現しました。安倍首相も12月26日にハワイに安着され,翌27日に真珠湾を訪れ、犠牲者を慰霊する予定です。日露間の平和条約締結に向けての歩みも画期的な進展を見せようとしています。12月15日のプーチン大統領との通訳のみの会談は実に95分間にも及びました。内容は一切明らかになっていませんが、領土の扱いをめぐる真剣な議論が交わされたものと思えます。
 しかし、中国海軍の艦隊が12月25日に宮古島海峡、続いてバシー海峡を通過しました。きな臭い動きは、残念なことに、明年一層激しさを増しそうです。

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