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エッセイ・コラム

第7芸術・第9芸術

内田 満夫

 芸術のジャンルが序数づけされているとは知らなかった。昨年末から今年の1月にかけての会期で、「ルーブル美術館特別展」が大阪・梅田で開催されていた。新聞の紹介記事に「9番目の芸術」とあるのが目にとまる。そこで同じ大阪の十三にある二つの映画館のことを思い出した。
 その映画館というのは、「第七芸術劇場」と「シアターセブン」。いずれも数字の「7」が館名を象徴している。どちらも客席が百席に満たないミニシアターで、商業映画館では取り上げないような、ひと味違った作品やドキュメンタリー、過去の名作を中心に上映するマニア向きの劇場である。
 調べてみると序数づけはおよそ次のようになっていることがわかった。第1が建築、第2が彫刻、第3が絵画で、ここまでは空間の芸術ということらしい。第4が音楽、第5が文学・詩、第6が演劇・舞踏で、これらは時間の芸術ということになっている。第7の映画は、空間と時間をつなぐ新しい芸術との触れ込みだ。
 十三にある2つの映画館が「7」を標榜する根拠はこれだった。ネットをあたってみたが、館名に「7」を冠する劇場は日本広しといえどもここだけのようだ。しかもこの2館、なんと同じビルの5階と6階に居をかまえている。作品傾向の似たライバル館が、軒を接する不思議な風景である。映画好きの私は年に数回は神戸から足を運ぶのだが、その都度5階に行ったり6階に行ったりしている。
 さて第7以降は、第8がメディア、第9が漫画となる。はじめに触れた大阪の展覧会だが、「ようこそルーブル漫画館へ」の呼びかけどおり、ルーブル美術館をテーマにした第9芸術・漫画の原画展だったのだ。フランス語圏には古くから「バンド・デシネ(BD)」と呼ばれる漫画文化が存在し、9番目の芸術として認識され批評や研究の対象になっているということだ。それにふさわしい、「グランフロント大阪」館内の立派なイベントスペースが会場である。ずっと気になっていたのだが、結局は行かずじまいに終ってしまった。

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