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エッセイ・コラム

キャリア開発で充実人生を(二)

安藤 英千代

 古今東西の偉人は、人生の各年代をどう捉えているのでしょうか?
 まず東洋の聖人孔子は、「十五にして学に志し」、二十歳代は無記述で色々思い悩んだようです。「三十歳にて而立」、「四十歳は迷わず精進」、五十歳台で自分はどんな使命を持ってこの世に生まれたのかを知るのに、孔子でも五十年が必要だったことに驚きます。「六十歳代は耳順=どんな事でも素直に受入れられる」ようになり、「七十歳代は、従心=自分の心のままに行動しても、人の道を踏み外すことがなくなった」とは何と謙虚な六十歳代、七十歳代でしょう。私達は勿論、軍事脅威・覇権むき出しの現代中国にもぜひ思い出して欲しい姿勢です。

 次に、マズローの欲求五段階説は本来年代別論ではありませんが、一生を強引に五段階に分けるとしたら、「二十歳前後は、愛されたい、集団所属欲求の真只中」、「四十、五十歳台は、周囲の人に認められたい社会的欲求の年代」、そして「六十歳以降は人生の総仕上げの自己実現の年代」と言えます。最近は学生も自己実現したいと口にしますが、マズローの説く自己実現は十七段階あり、最高位は「完成・正義、完全・必然、真・善・美」という境地で、六十歳以降が本格的な自己実現に取組む時期です。まさに一生勉強、一生修行です。

 D・スーパーの「職業的発達段階理論」も、基本的に孔子やマズローと同じで、特に大事だと説くのは六十六歳からの「円熟期」です。生き方をスローダウンし、少しずつ有給の仕事から離れ、更に専門能力を磨き、地域活動や趣味、特技を楽しみ、家族と関わる時間を増やす等、ライフスタイルを見直す時期です。人生の総仕上げの時期だといえます。
 最近話題の「海賊と呼ばれた男(出光佐三氏)」は、「死ぬ時に、我が人生は価値ある人生だったと思えるのが幸せな人生だ。日々懸命に生きよ」と述べています。私達は老いも若きも、この大命題=「人生の充実」に向かって一日一日を生かされていると言えます。

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