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エッセイ・コラム

過ちは繰返しませぬからⅡ―どうかしていた日本

内田 満夫

 広島原爆慰霊碑碑文の、「安らかに眠ってください過ちは繰返しませぬから」の主語を、被爆国の「日本」と置き換えてみるとどうだろう。原爆投下という恐ろしい仕打ちを受けるほどの悪業を、日本が働いたのだろうか? 太平洋戦争期の日本の功罪はいろいろあっただろう。しかし慙愧に耐えない所業の数々を刻印し、周辺諸国とその国民に多大の迷惑と困難を強いたのは厳然たる事実である。
 当時の日本は対戦国にどう映っていたのだろうか? たとえば神風特攻隊の体当たり攻撃。国を守らんとの若者の純粋・勇敢な精神も、彼らには軍国主義に洗脳された狂気の自爆と映ったに違いない。現在の「イスラム国・IS」の聖戦(ジハード)自爆テロと同列に見られたとしたら、死んでも死にきれないだろう。
 沖縄戦が大きな犠牲を残して終わったあともなお、軍部は本土決戦、一億総玉砕を声高に叫んでいた。都市への無差別爆撃をいくら繰り返しても屈しない「狂気」の集団に、遂に鉄槌が下された。わが日本は罪を犯し、その罰を受けたのだ。
 原爆投下が「やむをえない」と受け取る見方は、実は被爆国の日本国内にもあるのだ。昭和天皇が、「広島市民には気の毒であるがやむをえない」と発言して問題になった。「しょうがなかった」と発言して大臣の座を追われた政治家もいる。やむをえない、しょうがないと片づけられては、犠牲者は浮かばれない。
 戦後わが国は、広島、長崎市民を先頭に国をあげて、世界で唯一の被爆国としての立ち位置を長年にわたり確認してきた。式典では、犠牲者の鎮魂と核兵器のない世界平和を祈念する。米国のオバマ前大統領も昨年5月、原爆投下国の現職大統領として初めて広島の平和祈念公園を訪れている。
 日本を無謀な戦争に駆り立てた戦争指導者・軍部にすべての責任がある。しかしそれに先導されて「狂気」に駆り立てられていた当時の日本と日本国民もどうかしていたのだ。暴走した軍国主義・日本の大罪は、結果として広島と長崎の市民が一手にその罰を引き受けることになった。そのことを決して忘れてはならない。

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