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エッセイ・コラム

恩師を目指して五十年

安藤 英千代

 誰しも尊敬してやまない恩師があると思います。私は中学三年担任だった財部先生です。出会いから五十余年、いつも心の奥で対話しており、「この恩師との出会いがなかったら今の自分はなかった!」と、改めて深く感謝します。先生はその頃四十歳前の働き盛り、小柄な身体に熱血が溢れていました。「将来、あの先生のようになりたい!」十四歳の私はそう決心しました。
 しかし大学四年の教育実習で受け持ったクラスの数名が、未熟な教生を困らせようと教科書の陰で早弁しているのを見つけました。その指導をする際に「厳しい会社体験を積まないと彼らを正しく指導はできない!」と実感して企業人となりました。そして仕事に追われ、結婚し、専門外の社員教育も担当し、「形は変わったけど先生への恩返しと若者の指導育成はできたかな・・」と自己満足していました。

 そして出会いから五十余年、何と私は先生と殆ど同じ内容の中学数学の授業を工科系大学三年生に就活準備講座(SPI)で教える事になりました。まさにディズニーの名言 If you can dream it , you can do it .です。そして教育実習時決心した「社会・企業を熟知した教師として、“仕事とは何か?企業とは?社会が求めるリーダーは?人生にとって大事なものは?”等、信念を持って伝えています。
 当初「90分授業を連続4コマ×2週×2学科の授業が初老の自分に大丈夫か?」と不安だらけでしたが、あの財部先生の授業風景(=講義はメリハリがあり簡潔明瞭、板書は名絵画のように丁寧で綺麗)を思い出しながら何とか乗り切りました。講座終了後の学生アンケートは、【①役に立った、②分かり易かった、③講師の熱意を感じた いずれも100%】の結果でした。しかしあの財部先生の名授業には程遠く、これからなお精進して一歩でも近づこうと再決心しています。
 また「少子高齢化の労働力不足対策の切り札は、働く意欲のある高齢者を活用することだ!」と、改めて確信しています。

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