作品の閲覧

エッセイ・コラム

若者に伝えたい働く意味

安藤 英千代

 いつの時代も若者は崇高な志と決意を抱いて社会人スタートします。
 しかし現実の仕事は想像以上に厳しいものです。覚えるべき事は山ほどあり、勉強しても奥行きは広がり、人間関係は難しく、失敗すると気が滅入り、色々な困難な問題が山積みになっていく…。「果たして自分はやっていけるのか…」と思い悩む日々。3ヶ月・3年目の危機。この時期にかなりの若者がメンタル不全となり退職者もでます。しかしこれは誰もが通る試練の時期です。そういう若者達に是非読んで欲しいのが、「職業と人生」(田中良雄:著)です。40年前のベストセラーですが、目からウロコの落ちる人生指針が満載です。

○人生とは・・・

一生涯自分を育てていく修行の道程

○何の為に働くか

 働く事は生きる事で、生きる事は働く事。生きる為に食うとは、働く為に食う事であり、食う為に働くのではない。単に生きる事は人間でなくあらゆる動物がやっている。人間にしか出来ないことは、『人としてより良く生きよう』と努力する事。

○仕事が面白くなくなる原因
  • ①強られて働く…働かないと食えない。規則、地位、収入から強制
  • ②仕事が不適切…『才能、力量、長所、性格等』に仕事が合わず、力を発揮できず、気乗りがせず、面白くない
  • ③上司・先輩が、能力を認めてくれず何時までも下働きの不満。しかし、どこの世界に行っても、これがない職場は存在しない。
○自分はどちらの生き方?
  • ①我儘を押通す道…天才・名人の道。飢死も厭わぬ覚悟が必要
  • ②我儘を言わぬ道…好嫌い・我儘を言わず、嫌な事でも我慢して努力し乗越える地味で常識的な普通人・通常人の道。
○遠美近醜

 「職業選択は自由」だが、現実は自分の意思外の因縁で仕事は決まる。これを天命とし、身も心も天命に従い精一杯働き抜くのが幸福の道である。人の仕事は良く見え自分の仕事は詰まらない⇒遠くは美しく近づくと醜い。これに気付かずに、いくら仕事を変わっても一生不平不満は消えない。

○適材適所は誰が決める?

 自分の好き嫌いで仕事の適不適を判断するのは極めて危険で要注意。不適所にあって深刻な苦悩と健闘を続けて乗越え、不適所を適所に、苦悩を悦びに変えていく力強い人生こそ、尊い奥深い会心の人生。

○仕事は生き物

 笑顔で仕事に向かえば仕事も笑顔で近寄ってくる。仕事は、心からこれを愛するものの所に、自然にあつまってくる。『決択第一』…職業に対する態度は、出来るだけ早く決断採択し、一旦決択後は、迷うことなく一意専心、その仕事に打ち込む事が重要。

○仕事場は人生の道場

 我々の仕事場は、自分を育て高めてくれる神聖な道場である。我々がこの世に生きる事は、様々な恩を限りなく受けて生かされている。その感謝、報恩、奉仕を実現する場は、職業・仕事の場以外にない。

○仕事の徳

 苦痛な仕事に耐え一生懸命頑張れば、ついには嫌いが悦びになる。これが「仕事の徳」で全ての仕事に必ず備わっている。

○仕事が人を育てる

 仕事が人間を良い者に育てる。良い人間が良い仕事を生み、相互が限りなく向上進展を遂げる。

○一隅を照らす

 昔中国の魏王が「私の国には宝石が十個あり、これが国の宝だ」と自慢した。すると斉王は「私の国は一隅を照らす人が沢山いる。これが私の国の宝だ」と答えた。斉の民のように自分に与えられた仕事を懸命に励み、一隅を照らす者こそ国の宝だ。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧