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エッセイ・コラム

西郷隆盛の原点「言志四録」

安藤 英千代

 平成30年のNHK大河ドラマは西郷隆盛の生涯です。
 私の故郷では、誰もが尊敬してやまない大英雄です。私自身、悩める企業新人時代に、独身寮で毎晩、林房雄の「西郷隆盛」全30巻を何回も貪るように読み、「敬天愛人」を自分の生きる指針にしました。読みながらいつも考えたのは、「西郷さんは、いつこのような偉大な生き方を身に着けたのだろう?」という事でした。そして分かったことは、西郷さんが座右の銘にしていたのが、若いころに熟読し愛された佐藤一斎の「言志四録」だったという事です。全1133条の中から特に101条を選んで書き留め、死ぬまで肌身離さず愛読し実践したということです。その中から今回は若者が大事にしてほしい27条を選んで紹介します。

 江戸時代末期の大航海時代、世界はアフリカ⇒インド⇒東南アジア⇒中国と欧米に侵略され、植民地拡大・収奪が進行していました。そういう時代に、日本の植民地化・隷属化に危機感を抱いた若者達が、自らの夢も命も家族をも投げ打ち、近代日本の確立に奔走してました。佐久間象山・吉田松陰・橋本佐内等の先駆的救国の志士が安政の大獄で倒れた後も、西郷隆盛、坂本竜馬・高杉晋作・木戸孝允らの若者達が次々に綺羅星のごとく輩出し、生死を超越して行動しました。
 その時代に匹敵する国難の時代と言われる現代、このような救国のリーダーが中々出現しないのは何故でしょうか。
 これら維新の志士の伝記を読むと、武士としての徹底した家庭教育や四書五経の素読・深耕のほかに、若い頃、佐藤一斎の「言志四録」を熟読・咀嚼し、自分の人生の使命を考え、心の鍛錬をして自らの行動指針にしてした事が共通しています。そこに書かれている事は、現代の経営学者やトップマネージメントが述べている最新の経営理論と全く同じであり、200年も前に書かれ、またその本に若い志士達が共鳴して明治維新へと向かった事に驚くばかりです。
 混迷する現代に生きる私達も「佐藤一斎」をしっかりと学び「生きる意味、自分の人生の使命を考えながら生きる」事が必要だと思います。そして一人一人が日本人らしさを身に着け、「面従腹背が官僚としての私の座右の銘」と恥ずかしげもなく述べる元文科省次官などのような劣化官僚を全て清掃・放逐し、人の心の美しい日本を取り戻しましょう!

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