りんご
人間は四千年前からりんごを栽培してきた。原産地の北部コーカサス地方からアーリア人がヨーロッパへ持ち込んだという。
アダムとイヴが食べた禁断の果実はりんごではなかったというのが現代の定説らしいが、一方、An apple a day keeps the doctor away. ということわざがあるほどヨーロッパ人はりんごを好むといわれる。
日本の和りんごは中国から伝わったと考えられるが、すでに平安時代に食されていたことが記録に残っている。西洋種のものが入ってきたのは江戸の末期、一説には福井藩主松平春嶽が巣鴨の下屋敷で栽培したのが始めともいわれている。
幼い頃熱を出したとき、母親にすりおろしたりんごを食べさせられたから、日本でもやはり身体に良いと思われてきたのだろう。
私は子供の頃からりんごは嫌いでもなく格別好きでもなかったが、りんごよりもみかんの方が、馴染みの果物だったような気がする。
それが最近すっかりりんご党になった。一昨年の秋、青森を旅してからである。白神山地や八甲田を回る途中で、たまたま弘前のりんご集荷市場を見学した。
山と積まれたりんごの競りの見学が終わった後、信じられないほど大きな真っ赤なリンゴが試食に出された。皮付きのその一切れを口にする。シャキっとした食感、甘酸っぱい特有の味、ああこれこそりんごだと思った。見上げると秋晴れの中、お岩木山の稜線がくっきりと伸びていた。
りんごに魅了された私は、帰った次の日から昼食後のデザートにりんごを食べることにした。一個を八等分にして芯をとり、私の分は皮をつけたままである。
以来二年間、ほゞ毎日食べている。りんごの品種も少しは判るようになった。「サン」とつくのは成熟期に無袋のもの。表面の生地は粗いが甘味が多く味が良い。もっぱら「サンふじ」を好んでいる。
最近は貯蔵が良く、一年中新鮮な状態で食べられるが、やはり今年のものが出回るこの時期がうれしい。
今日は午後からカラオケ。りんごを食べて、一曲目は「りんご村から」を歌おう。