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エッセイ・コラム

今年の花見

内田 満夫

 開花のなかった昨年の「桜まつり」に懲りて、今年は開催時期を遅めにしたところ、それが各所でことごとく裏目に出た。2月の初めこそ寒かったものの、2月後半から3月に入る頃からぐんぐん気温が上がりだし、ここ神戸・阪神地区では昨年より10日ほど早く開花した。芦屋川、夙川、生田川、妙法寺川などの桜の名所では軒並み、昨年は開花のない桜まつり、今年は散り終わって花のない桜まつりとなった。
 自分は花オンチだが、桜だけは好きで毎年開花を心待ちにしている。去年のことがあるので、今年は自分で開花予想を立ててみることにした。3通りほどの方法があるのだが、2月1日からの平均気温の累計が400度に達する日を開花日と予測する方法が、最も的中率が高かったようだ。グラフにした累計気温の推移を見ながら一喜一憂していたが、1週間前には神戸の実際の開花日、3月23日の見当をつけることができた。
 アーモンドの木が桜に似た花を咲かせるらしいことを聞きつけてからは、花期が桜よりやや早いアーモンドから毎年の花見をスタートしている。次いでピンク色の濃い早咲きのカワズザクラ、エドヒガン、カンヒザクラ、陽光ザクラなどを探して神戸市内を歩く。3月末から4月初めの満開期にかけては、目当てのソメイヨシノを求めて、団地内の公園はもとより近隣の主だった見どころを巡り、いわば良いとこどりをして薄紅色の花の世界をたっぷりと堪能した。
 花の散ってしまった芦屋川、生田川の桜まつりも覗いてみた。ステージの出し物や出店もあって、桜はなくとも地域をあげての祭の雰囲気は健在だ。それなりの盛りあがりを見せて、誰も花のことなどてんで気にしていないかのようである。実は自分も桜が好きだとは言ったが、本当のところは花の下の賑わいの中で呑むのが好きなのだ。だからこの時期には常時、リュックの中に酒とつまみを忍ばせて歩く。
 今年の花見三昧は終った。ほぼ葉桜となった団地公園の向かい側の、道路沿いの土手の芝桜が今は満開だ。鮮やかなピンクの絨毯を、しばらくは楽しめそうだ。

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