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エッセイ・コラム

シルバー川柳風景

西川 武彦

 昨今の読書は、分厚いハードカバーの本は避けて、図書館から借りる新書や文庫本の類いで賄っているが、今夏は酷暑から逃れるためもあり、笑いを誘うシルバー川柳を読み漁っている。シリーズ物で6s巻あり、傘寿を過ぎた後期高齢者を笑いで癒してくれるのである。
 掲載句を転写することはできないから、日ごろのわが身、つまり老いさらばえたご隠居の言動を写して、少しだけ捩ってみた。

 年齢が離れた連れ合いは、なにかと飛び歩いて不在が多い。で、書斎に籠ったご隠居は、電話の受話器が置いてある食堂との境のドアを開けたまま、留守番することになる。ネットで妖しいサイトに目を凝らしているときにかぎりなぜか℡が多い。椅子から重い腰を上げ受話器に向かう足が縺れる。
 で、「やっと立ち、電話にでれば 音が止み」となるから情けない。

 書斎に戻ってまもなく、今度は玄関でピンポ-ンと響く。注文した宅配便が届いたのだろう。受話器になんとかたどりつくが、今度も遅かったのだろう。
「ピンポ-ン 足がもつれて 不在票」という有様だ。

 昨年は、傘寿を記念しての同期会が、中高、大学、会社と続いた。亡くなったとか、体調不全が理由で参加者が年々減っているのは、仕方ないにしても寂しい。
「同期会 黙祷・献杯 会始め」。
 出席者も大半は五体満足とはいかない。脳腫瘍、白内障、喉頭がん、心臓のパイプ、腰痛、エトセトラで賑やかだ。「同期会 持病の話で 華がさく」。
 話がお墓に移る。先祖代々のそれは地方にあって遠いから、子孫のためにも分骨して家の近くに移す話で弾む。「女子大を 見下ろす丘に 墓を替え」といったのは誰だったろうか…。
 年々物忘れが激しくなり、人の名前が出てこない。たまにしか出席しない男もいるから、やむをえないかもしれない。で、こういうことになる。
「こんにちは ハテ誰だっけ さようなら」。

 夏バテもあるが、とにかく疲れやすく、どこそこかまわず居眠りする。箸をにぎったまま口を軽く開けて眼を閉じていることもあるほどだ。
「朝昼晩 ハラふくれれば まぶた閉じ」…、と詠んだところで眠くなりました。

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