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エッセイ・コラム

ほんまに、よーやるわ

松浦 俊博

 昨年10月、高校卒業50周年記念の会があり大阪・梅田の新阪急ホテルに行ってきた。今回はバレー部のK君が幹事をして盛り上げたため、卒業生の4割に近い81名が参加した。彼の尽力で記念文集も発行され当日配布された。
 最初に物故者への黙祷を行ったが、既に1割を越えたことに驚いた。各自、ぼつぼつ彼岸に行く準備をしておけということだろう。食事は久々のごちそうで、オマールエビや神戸牛をたらふくいただいた。

 会の締めにビデオ紹介があった。NHKのOBであるS君が2か月前に福岡に出向いて取材してきたものだ。同年配に見える、品の良い女性へのインタビューである。すぐに「あー、彼女か」とわかった。

 高校1年の終わりに九州一周の修学旅行をしたが、その時にバスガイドをしてくれた宮崎交通のHさんだ。1学年4クラスのうち私が居た3組のバスを担当してくれた清純で明るい美人である。男子校の悲しさで、彼女の近くの席とり競争は過熱した。他の組からも3組のバスにまぎれて乗り込もうとする不届き者もいたが、当然叩き出された。なんとか無事に旅行は終わった。
 20年ほど前に、同期のメール連絡網が完備して、「掲示板」が提供された。そのパスワードがHさんの名前と旅行した年を組み合わせたものになっていた。そこで、同期に昔の思い出が燃え広がった。掲示板には昔の旅行の写真が次々投稿されて「火に油、焼け石に水」状態になった。後日談まで紹介された。旅行の年の秋にHさんが友人と2人で神戸に来られ、同期が10人ほど集まってポートタワーなどを案内したそうだ。私に声がかからなかったのは、きっと敬遠されたのだろう。当時は丸刈りが校則だったので、坊主頭の高校生10人が美女を囲んで案内する異様な光景だったと思う。
 今回のビデオの中で、Hさんはその時にもらった土産の人形を見せて、大事にしてきたと話しておられた。旅行中にバスで歌ってくれた「思い出のスカイライン」を変わらぬ美声で歌ってくれた。NHKのS君はさすがプロだけあって見事にまとめていた。それにしてもわざわざ会いに行くか?「ほんまに、よーやるわ」。みんなの初恋の思い出かな。

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