真夏の夜の夢 ~隠居のつぶやき~
自民党の一党支配で国政に緊張感を欠き、世の中に空虚な閉塞感がまん延している感じの令和の初夏、ちょっとしたビッグニュースが流れた。将来の首相候補ともいわれる小泉進次郎さんが著名な美女キャスターの滝川クリステルさんと結婚するというのだ。注目したいのは、彼が郵政民営化を公約して実現し、政界を引退した今では原発廃止を唱える元首相の次男であることに加えて、滝川さんは父親がフランス人の日仏ハーフということである。
二極を軸とした冷戦が終わった後の平成の時代には、世界で自由が謳歌され、国境を越えてヒト・モノ・カネが行き交ういわゆるグローバリゼーションが加速した。国家間の衝突が少なくなったのに反比例して、国際的には、民族間、宗教間の対立激化で、テロが多発、それを逃れる難民が欧米に逃れる…、トランプさんの登場も含めて、新たな混迷を各地にもたらした感じである。
四季温暖で、自然に恵まれた東洋の豊かな国ジャパンも例外ではなかろう。平成時代には来日する外国人旅行者の数は激しく右上がりを続け、令和に入った今年は、年間3500万を超えんとしている。西欧諸国のそれに近い数字である。
筆者が生れて以来住み続ける下北沢も例外ではない。細い道路が入り組むシモキタには、日本の若者に加えて、コーケシアン系とみられる外国人がぞろぞろぶらついている。数年前からそれが目立つようになった背景には、ガイド・通訳代わりのスマホの普及もあろう。連れ合いがジャパニーズの男女もちらほら…。その昔、筆者がよくぶらついたロンドンやパリの裏町に似てきた感じなのだ。
毎週一度、歌舞伎町に近い新大久保のスタジオで歌の練習をしているが、界隈はジャパンとは思えない雰囲気だ。ここは印パ・アジア系が圧倒的だ。もっとも多いのは韓国系だろうか。日韓関係の混迷なんのそのという感じだ。毎週海外旅行を楽しんでいる気分で嬉しい。
冷戦が終わり、人の流れ・動きが世界的に新しい混迷を迎えたような平成時代を経て、ジャパンでは令和を迎えた。新しい天皇は元外交官だった才媛と結ばれている。同じレベルで論じるのはどうかと思わないではないが、テニスの大阪なおみ、バスケットの八村選手、角界、最近では、ラグビーの日本代表だってノン・ジャパニーズが顔を連ねてどこの国のチームか判別しがたいほどだ。
十年後、二十年後のジャパンは、そしてシモキタはどうなっているだろうかと、その頃には千の風になっているかもしれないご隠居は、寝室の冷房をオンにしたりオフにしたりしながら、真夏の夜の夢を追っている。(完)