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エッセイ・コラム

下手な言い訳

三 春

 10年ぶり、いや15年ぶりだろうか、「不二家ホームパイ」を買った。随分と小ぶりになったなぁとしみじみ。気のせいかとも思ったが、そういえば「ばかうけ ゴマ揚げ」(栗山米菓)も森永の「ビスケットサンド」(バニラアイスをビスケットで挟んだもの)もひとまわり小さくなったし、パリッとした皮が魅力の「シャウエッセンソーセージ」(日本ハム)は入り数が明らかに1本(もしかして2本?)減った。好きなものだからこそその違いがよくわかる。
 つまりは実質的な値上げで、メーカーが特に宣言しなくても、製造コスト増による値上げは止むを得ないと消費者も理解している。

 ところが、ひところ話題になった「明治・おいしい牛乳」の場合はちょっと込み入っている。わざわざ宣言したのはいいが、その理由づけがセコ過ぎると多くの消費者が声をあげたのに対し、「値上げという認識はありません」とメーカーは抗弁した。

 両者の主張は以下の通り。

●メーカー側の説明
  • 価格据え置き、容器の変更、内容量減(1ℓ⇒900㎖)
  • 飲み切れずに捨てる人が多いから中身を減らすほうがいいと判断した
  • 新容器はキャップ付きで衛生的。容器が小さくなった(幅5㎜減)ので筋肉の負担が減り、手の小さい子供や握力の弱い高齢者でも持ちやすい
  • 価格はほとんど変わらないから値上げではない
●消費者の反応
  • 内容量1割減なら値上げ1割と同じ
  • 素直に「値上げします、ごめんなさい」と言えば角が立たないのに
  • 消費者は敏感だ。下手な言い訳には嫌悪感が募るだけ
  • コスト増に伴って値上げしたり減らしたりは仕方ないと思うが、こんなセコイ言い訳めいたことを言うのは実に不愉快だ
  • 自分から「おいしい」と押し付けがましく謳うほどだ、「飲み切れないから減らすほうがいい」と勝手に判断するのも当然さ

 スーパーマーケットでその牛乳を見る度に、こんな言葉を思い出す。
「下手な言い訳は、黙っているより悪い」
「下手な言い訳でも、しないよりはまし」

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