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エッセイ・コラム

桂離宮を巡る (2)飛び石の配列

藤原 道夫

 桂離宮は、書院群と複雑な形の池をめぐる回遊式庭園から成り、総面積は凡そ七万㎡におよぶ。庭園内に茶室のある四棟の建物がたち、時節にあった茶事を楽しみ、また池で舟遊びをしながら茶室を訪れることもできるように設計されている。
 これまでにしばしばこの離宮を参観し、みる毎に造営した人たちの意図を理解し、景観を楽しめるようになっていった。印象に残っていることを数回にわけて記してみたい。
 離宮内を案内されて目を見張るのは、自然石や切り石を用いた飛び石の配列のみごとさ。一つ一つの石の配置に造営者の美意識を感じ、「よくぞここまでやる!」と感嘆する。案内される順に例をあげよう。

 先ず紅葉の馬場からすぐに左に入って外腰掛に至る道、飛び石に自然と目が向く。苔のなかにさりげなく置かれているような石は、赤味がかっていたり緑色をおびたりさまざま。めったに出あわなかったが、雨の後の美しさは格別だ。苔の緑と相まって石が生き生きとしているかのよう。道はゆるやかにS状にカーブし、歩く人を外腰掛へといざなう。
 松琴亭への道にかかる一枚岩の白川橋をわたると、右手に池の面へとつづく石の配列が目につく。くの字型の大きな石の先、水面に三つの石が縦にならんでいる。これは「流れ手水」とよばれ、茶室の蹲踞(つくばい)にみたてた石組み。大きな石に手桶と柄杓を置き、池に向かって手を清めたとか。創意あふれるこの石組みは桂三景の一つにあげられている。(他は「鼓の滝」と「真の飛石」)
 庭園内に茶室のある建物のほかに、瓦屋根が重くかんじられる園林堂がある。かつて桂離宮の当主歴代の位牌がおかれていた。少しばかり高いところをとおる道から園林堂の横側に近づくと、白い切り石の配列が目にとびこんでくる。堂が陽をさえぎって影をつくる。稲妻型にみえる黒っぽい雨落を四角い白い石が点々と横切っている。むこう側の土橋のあたりは明るいので、この飛び石に逆光があたっているように目にうつる。みる位置により石はひし形にも長方形にもみえる。無造作に置かれているようだが、おそらく計算しつくされた配置なのだろう。

 この他にも新御殿に向かってまっすぐにのびる飛び石や雁行型にたてられた書院群の前をとおる道に置かれた三つの緑色の自然石など、あげだすときりがない。

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