作品の閲覧

エッセイ・コラム

デンマークの王と「ブルートゥース」

野瀬 隆平

 運動不足の解消をかねて、アンデルセン公園に出かけた。自宅から歩いておよそ30分の所にある。ここで見たものから、新たな知識を得ることとなった。

 これまで何度も訪れたことがある公園だが、園内を散策していて今回はじめて目に留まったものがある。それは、葉牡丹に囲まれて置かれている大きな石の塊である。何なのか。
 説明版によると、在日デンマーク大使館から贈られた「ハラールの石碑」のレプリカであるという。はて、ハラールの石碑とは?
 帰宅して早速調べてみた。今は、インターネットで簡単に検索できるのが有り難い。
「ハラール」とは西暦900年代のデンマークの王様、ハラール一世のこと。
 石碑はこの王が両親のために建てたもの。高さが 2m以上もある三角錐で碑文は古いルーン文字で刻まれている。
 王の偉業の一つに、デンマークとスウェーデンとを、交渉により血を流さずに平和裏に統一したことがある。
 この王様の、あだ名がデンマーク語で「Blatand」。bla(aの上に小さな○がついている)は、「浅黒い、青い」という意味。tandは、「首領、族長」という意味と、「歯」の両方があるらしい。  死んだとき彼の歯が青黒かったことから、このような名がつけられたともいわれている。即ち、ハラール一世、青歯王、(Harald Blatand)である。

 一方、ブルートゥースのこと。ご存知の方もおられるだろうが、Wi-Fiなどと同様、無線通信規格の一つ。
 自分が使っているものでは、パソコンとマウスを無線でつないでいるのがこれだ。また、電車の中などで、耳にイヤーフォーンを付けているが、そこから何処にも線が伸びていないのを見かける。これも、ブルートゥースでポケットなどに入れた音源機器と無線でつながれており、音楽を楽しんでいるのだろう。
 異なる電子機器を無線でつなぐこの技術を開発したのが、スウェーデンに本社をおくエリクソン社である。このシステムに名前を付けるにあたって、異なる種族の統合を実現させた王の名前にちなんでBlatand、英語でBluetoothにしたという次第である。
 ちなみに、ブルートゥースを示すあの三角形を二つ縦に並べたようなトレードマークは、石碑にも書かれているルーン文字の、H(ハラール)とB(ブルートゥース)の二文字を重ね合わせたものである。

注:アンデルセン公園の石碑の写真は、「会員写真館」に掲載します。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧