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エッセイ・コラム

月月火水木金金 ~隠居のつぶやき

西川 武彦

 日本の高度成長真っ盛りの頃、土日返上で働くサラリーマンを表題のように揶揄することが流行りました。元はといえば日本の軍歌とか。筆者は、現役時代、航空会社で、時差のある世界各国・各社との折衝業務部門に計七年ほど席を置いていました。理解があり有能な上司と同僚がいるグループに属して、幸いにも生き抜きましたが、「二十四時間勤務」とも揶揄され、管理職を含め社員がばたばた倒れる過激な部署でした。
 コロナ禍で月月火水木金金と家に閉じ込められる今、ふと当時を偲んでいます。暇なのです。
 ご隠居の毎日は、朝六時時起床、洗面を終え、パソコンを開いてメールの整理、産経が取り纏めるMSNニュースを開いて、網羅されている報道各社の情報を拾い読む。昔の航空旅行でも、搭載されている各社の新聞を読み漁ったものです。
 リビングに移り、同じ航空会社にいたことがある後期高齢者が調理したアメリカンブレックファーストを角盆に載せ、機内用のひざ掛け毛布を広げて、ファーストクラス然のシートに沈みます。で、7時15分からNHKの新旧の朝ドラ二本を観ながら、朝食を楽しみます。我が家の天井は黒地だから照明を落とすと機内の雰囲気になります。

 食事が終わると、台所で残物処理と皿洗い…、これはご隠居の仕事になっています。洗面所で朝の行事を滞りなくすませると、リビングの横長のソファで仰向けになり、新聞を隈なく読みます。縁があって東京新聞です。前日コンビニで求めた英字新聞の読み残した部分を漁ることもあります。合わせて30分余り。ボケ防止です。その間にしっかり消化。

 次の仕事は、朝の体操です。区主催の体操教室でなぜか「先生」をしていた老妻が、BGMを流しながら、指導してくれます。何回やっても憶えが悪く、なにかと出来が良くなかった中高時代をふと思い出します。
 身体をほぐしたあとは、掃除です。これもご隠居のお仕事、老妻は洗濯がご担当。終われば、夫々ノートパソコンでお仕事。ご隠居の場合は、エッセイ・川柳・掌編小説などのペンクラブ活動に励みます。挑戦心を失わないよう、公募ガイドなどのコンテストに応募していますが、結果ははかばかしくないのが悲しいところです。
 昼前には、三十分余り、人気のない路地を選んで散歩。落とし物をしたり、人にぶつかりそうになったり、なにかと頼りないので、老妻が数メートルあとからついてくることも…。

 昼食は、朝と同じで、TV各社のニュースを選びながら自家製「機内食」を口に運びます。
 午後は、一時からNHKBSの名画劇場を鑑賞。「機内映画」です。3時半からのテレビドラマ「相棒」の録画を老妻に託して(自分ではできないので)、ソファに横たわって週刊誌か読みかけの新書を捲るうちに目を閉じて昼寝。目が覚める頃には西日が…。
 午後の散歩の時間です。行先は歩いて十分の「薬屋」と称する酒屋。求める飲み薬は税込み千円足らずのボルドーの赤。毎夕半分開けるから、一日の薬代は500円です。健康保険は効きませんが、年金生活でもこの程度は賄えます。
 ……と、ここまで綴って情けなくなりました。ウクレレ漫談家・牧伸二さんじゃないけど「あ~あ、やんなっちゃった、あ~あ 驚いた」。筆を置きます。(完)

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