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エッセイ・コラム

「風当たり 外より強い 家のなか」~隠居の呟き

西川 武彦

 コロナ災禍で、さわやかな春の日々は家に閉じ込められていました。6月初めに「月月火水木金金」と題してエッセイで綴った状況は、7月に入った今もほぼ変っていません。
 そんななか、6月末に久しぶりに開かれたペン川柳の分科会では、酔雅こと筆者が詠んだ表題の句が特選に選ばれました。もっと川柳っぽい秀句があったと記憶していますが、選者の皆さまのフラストレーションがこの句に集約されたというところでしょうか。

 ペンクラブ以外の諸会合もすべて取りやめとなり、パソコンを使っての情報漁り、ワードでの物書き、メール交信等々は、すべて机上のノートパソコンを指で黙々と操れば済みます。無言、会話なし。ZOOMとかで、パソコン画面に代わるがわる参加者が現われて、喧々諤々する仕組みもあるそうですが、髭剃りのとき以外は見たくもない自分の顔がにこやかに談話するのを眺めるのは気恥ずかしいので、偏屈な後期高齢者は、ここでも「出不精」になっています。

 隣室では時々老妻が自分のパソコンを開いて指を動かしているようですが、コロナの有無にかかわらず、主婦には家事があるから、普段とほぼ変わらないペース配分で済みます。買い物は生活協同組合で毎週纏め買いしているからほぼ不要。足りないものは、運動不足解消の名目で、近くのコンビニに「主夫」を使いに出せばよい。同じ理由で、身体を動かす部屋の掃除も「主夫」の役目になっています。悲しいのは、その程度では運動不足は解消しないようで、裸になると、あばら骨が目立つ痩身にお腹だけがぽっくり膨らんでいるという惨状だから情けない。パソコンのやりすぎとテレビの映画劇場などの見過ぎで目は益々霞む…。

 夕方は5時半には「マイ・バー」が開店します。夕刊を読みながら、もくもくと杯を重ねるから、夕飯が始まる頃にはすっかり出来上がっています。眠気覚ましをかねて、毎日録画しているテレビドラマ「相棒」の開演となります。もぐもぐしながら、杉下刑事の謎解きを楽しみます。時には、同じ六時半からの「水戸黄門」がそれに代わります。酔いがまわって、すっかり水戸のご隠居になったつもりで眺めているのだからオメデタイ。それらが7時半に終われば、8時には床に入って読書。新書の一章が目標ですが、内容によってはそこまでもたず、谷村新司さんの「昴」の世界に入り、「目を閉じてなにも見えず……」で、the End。 こんなことがいつまで続くのやら…と、ご隠居は呟いております。

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