山荘暮らしは魅力的
本10月のOBペン例会でIさんが蓼科山荘での暮らしを紹介して下さった。山々に囲まれた環境で、色々な種類の野菜作りやその料理を楽しみ晴耕雨読の日々を送る、まるで別世界の生活に感動した。
ストイックな価値観を持つ私は、妻が傍にいればどこに住んでも幸せだ。ただ、高齢者だから医者が近くにいて買い物が楽にできる便利な場所がいい。体力と気力が伴わないと山荘暮らしは難しいと思う。せいぜいレンタル山荘で短期間過ごすくらいが関の山だろう。
娘の夫の実家が北イタリア・トレント郊外の南チロル山村にある。標高800メートルの高地にある山荘だ。20年ほど前に、彼とお父さんが山の斜面に自分達で建てたそうだ。1階の車庫の奥には大工道具が残っている。花に縁どられた広いベランダ付き3階建ての奇麗な家だ。今までに二度、夏休みに訪問した。
朝早く起きてシャワーを浴び、ベランダに出て小鳥のさえずりや鶏の鳴き声を聞きながら向かいのボンドーネの山を眺める。6時過ぎから朝日が山頂を照らしはじめて、周りの山々が次第に明るくなる様子をぼんやりと見る。7時に近くの教会の鐘がさわやかに響く。それからベランダで娘夫婦と、お茶とパン、生ハムとメロンなどをいただくのが毎日の始まりだった。
バーベキュー家族会もある。朝早くから火の準備をして、前日から特製のたれに漬けている鶏の腿肉を、ゆっくり時間をかけて焼く。味のしみ込んだ柔らかくておいしい腿肉が仕上がる。裏山の畑のズッキーニを焼いてリンゴ酢で食べるおつまみや、ズッキーニの黄色い花のテンプラもおいしい。トウモロコシの粉から作るポレンタは北イタリアの定番料理だ。ワインは農家の自家製で添加物がなくおいしい。夕食にはぶどうの焼酎であるグラッパもいただく。
山荘では家事は山ほどある。裏山の野菜畑の世話、ベランダの縁取りの花や庭のバラの手入れ、冬の暖炉用の薪準備など。ゆったりと時間に縛られない生活をして仕事が残れば後送りする。夢のような暮らしだ。