作品の閲覧

エッセイ・コラム

顔認証システム

三春

 ノートパソコンを初めて買った。仕事上、ストレスなく素早く確実に入力できることが最優先だったので、PC登場以来ずっとデスクトップ派だった。デスクトップは場所をとるし、蛇のようにコードが這い回るし、裏側に埃が溜まりやすい。見た目も武骨である。だから、仕事にも時間にも追われなくなったらノートにしようと思っていた。実際に使ってみると、コードレスのマウスやキーボードを組み合わせればデスクトップと変わらない扱いやすさで、見た目スッキリ、ぐちゃぐちゃコードや埃ともサヨナラのいいこと尽くめ。
 メーカーは近ごろ急成長の「マウスコンピュータ」。文部科学省が進めるGIGAスクール構想にも一役かっているとか。20年前に私が目を付けたときは通販のみの小さな会社で、店頭で見かけることはなく、知名度も低かったので、どこのPCかと問われるとモゾモゾ言ってごまかしていたものだ。あの頃は鬱陶しい音声ガイダンスなしにナマの人間が電話を直接受けてくれた。それに、24時間365日の無料サポートが何よりありがたい。今回も、届いたその日の深夜に早速電話して各種設定を教えてもらった。今度は顔認証システムだからパスワードを入れる面倒もない。完全充電すれば電源無しでも9時間もつ。
 この顔認証システムが顔のどの部分で私を見分けるのか、ちょっとからかってみた。化粧有り無しは難なくクリア。ある夜、顔パックをしたまま覗いたら、目玉マークをキョロキョロさせながら私を探していたが、遂に諦めて「認識できません。PIN コードを入力してください」と出た。長い付き合いの飼い猫でさえパック顔にはギョッとするのだから、新参者じゃ無理もない。マスクやサングラス姿も識別できず。目だけではなく、鼻や頬、骨格などの数か所で判別しているらしい。これなら他人がデータを盗み見ることもなさそうだ。
 ところで、先日のハリウッド映画では、空港内の顔認証システムが写真だけをもとに犯人を探し出した。犯人は髭とサングラスで変装していたにも関わらず! よほど能力が高いのか、それともチェックの甘いアバウトなシステムなのか……、まぁ映画だからねぇ。

※ GIGA = Global and Innovation Gateway for All.

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧