『北越雪譜』(初篇巻之中)
本の紹介
『北越雪譜』の第三回目
縮の話
○越後縮(ちぢみ)p71
縮の名産地は魚沼郡のみ、品質が優れている。縮とは紵(お)で織る布の総称。昔は単に布といっていた。
※越後縮――小千谷縮(越後縮)ともいう。小千谷付近で産し越後縮ともいう。江戸時代には単に縮といっており『北越雪譜』にも「縮は越後魚沼郡だけのものが縮と言われるものだった。昔は布といった」とある。(服飾辞典―文化出版 s63年)
※『吾妻鏡』建久3年(1192)7月第29日(頼朝征夷大将軍就任の年)の条に「勅使帰洛の際将軍より餞別として越布千端」とある。
○縮の種類p72 ※地図参照
○紵(お)p73 材料の紵は会津、出羽最上産。
※紆(からむし) イラクサ科の多年生植物。苧麻(ちょま)、青苧(あおそ)、山紵(やまお)、真麻(まお)、苧麻(まお)など。
○紵績(おうみ)p73
○縷綸(いとによる)p74 「件のごとく雪中に糸となし、雪中に織り、雪水に酒ぎ、雪上に曝す。雪ありて縮あり、されば越後縮は雪と人と気力相半して名産の名あり。魚沼郡の雪は縮の親というべし。…」
○織婦(はたおりおんな)p75 「最恨むは年々金線を庄(つくらふ)て他人の為に嫁の衣装を作るといいしは宣なる哉々々」
挿絵p76,77御機屋の霊威、織女発狂の図
○織婦の発狂p78
○御機屋(おはたや)p79
○御機屋(おはたや)の霊威p79
挿絵p82p83(雪中晒縮図)
○縮を曝すp84
○縮の市 堀の内、十日町、小千谷、塩沢
読もう会での意見
- A氏
- 縮の原料のからむし(お)の産地が会津、羽州などというのが面白い。
いずれも上杉氏の縁故地である。上杉が越後を離れたあとも結びつきを感じる。 - B氏
- 縮は絹織物がルーツと聞いたこともある。まわりは群馬、埼玉など絹の産地が多いね。
- C氏
- 縮を集団加工型産業とせずに、家々でやったんだね。冬季、女性は機織りに精出し
男は酒か遊びか、出稼ぎだったのだろうね。
織婦の発狂の条
雪晒しから戻った、丹精こめた織物にコイン大のシミがついていて、織子の女性の気が触れるという哀しい話。
この雪晒し作業がどういう化学的原理で行われるのか、を巡って大議論。化学に詳しい人たちが黒板に元素記号を書いて大熱演でした。
御機屋の霊威
親の目を盗んで作業中に男と逢引きした織子が、その後神意により織れなくなり、記憶喪失に。大騒ぎの中に、逢引きの男性が名乗り出て、罰は自分が受けるという。最後はハッピイエンドのいい話。逢引きがいやらしくなく、むしろ男性を好感する声。
丁寧なこまやかな部分と簡潔な部分のバランスがとれた名文との評価。
川端康成が『雪国』で、『北越雪譜』のこの縮の部分を大いに参考にしているとの紹介も。
S氏より、雪の結晶構造の成り立ちについて学習した結果の説明がありました。