『地獄変』(全編)
(本の紹介)
芥川龍之介は、日本の古典に題材をとった短編小説が数多く知られている。これはその中でも有名かつ評判の高い作品である。『宇治拾遺物語』の一編から着想を得ているが、原文を離れて独創的な筋立て、緻密な描写となっている。
堀川の大殿様ご依頼の地獄図屏風、9割方は描きあげたのに肝心な中心部分が描けずに苦悶する絵師「良秀」。彼は殿様に、上臈一人を牛車に乗せ、火炎に包んでほしいと願いでて許される。ある夜、良秀の目の前で、猛火の犠牲になったのは――。
短編につきこれ以上の説明は省略したい。
(討論)
原作を越えた創作との意見が多かった。短編小説だけに、文章・構成が引き締まり、余分な状況説明がない。それ故、主要部分でも解釈が分かれて議論が盛り上がった。良秀論、殿様論、人間の業、人間の善悪、猿が登場して重要な役割をするがこの猿は?などなど。