『徒然草』兼好法師
本の紹介
前回ご紹介のように『徒然草』は、時期の異なる二つから成り立っているそうです。
安良岡康作先生によると、
第一部といわれる1段~32段は感傷的、詠嘆的な無常観の世界。ここを先月の会で味わいました。
第二部の33段以降は、実相的な無常観に発展しているそうです。より深く、透徹した無常観ということでしょう。今月はこの部分を中心に読みました。
安良岡先生の『徒然草の世界』(教育出版)をベースにしています。
- 世に従はん人は
166段、155段、74段、189段を読む。
「無常の世にあってどう生きるか、大きな問題が残るが、兼好がこの問題をどう考えて解決していったか」の前提ともいうべき各段(上記の書から。以下同様)
- 155段は感銘深い段。全員が揃って誉めた。客観的で緻密な観察力と、「消滅」
より「生起」に主眼を置いている点を高く評価。エッセイとしての文章のうまさも。
- 心なしと見ゆる者も
142段、44段を読む
「遁世した兼好が世俗生活をどのように見、捉え、表現しているか」を代表する段。
- 142段 世俗の生業について、作者は見下していないどころか、優しいまなざしを注いでいることが良く分かったとの声。
- 44段 きれいな情景。平安文学とはまったく異なる中世の世界。身が洗われるような清浄感、透明感があり、一部で禅の雰囲気も漂うとの感想。
- 高名の木登りといひし男
51段、109段、185段を読む
- 51段 大井川の辺に住む土民と水車作りに長けた宇治川べりの里人との対比。
- 109段 高校の教科書に必ず登場する「名人の木登り」の話。
話自体は分かり易い。高校時代の古文の懐旧談でひと時を過ごした。
- 老来りて、始めて道を行ぜんと
49段、58段、59段を読む
安良岡先生によると、徒然草の世界は3つの世界に分類できるという。
- ①世俗の世界
- 一般の人の社会生活に関するもの
- ②仏道の世界
- 出家して僧侶となった人の生きる世界 〃
- ③遁世者の世界
- 世捨て人がどのような生活をすべきか、どのように生きているか(兼好の住む世界) 〃
- 或人、法然上人に
39段、141段、106段を読む
- 39段 安良岡先生によると、傑出した段だそうです。「法然の面目、信仰の本質、(法然の)人間性を浮き彫りに。」と評価されています。
それを踏まえつつ、ゆっくり味わいました。