『真鶴』川上弘美
内藤さん、清水さんより著者と本の紹介あり。シニア男性軍ははじめて手に取った人がほとんど。ノーベル賞候補の声も上がっているとの紹介に「ポカン」。
2006年刊行の長編小説。
十数年前に夫が突如失踪した。理由も何も分からない。残された40代の妻は、母親、娘との女3人の生活に。夫の影をある時は深く、ある時は薄く求めて生きている。最近になって、夫の手帳に残された「真鶴」という断片的な言葉を頼りに東京・真鶴間を行き来する。その過程で生じる夫への思いと疑い、生と死、成長する娘との距離感、不倫相手の男性との関係など。どこまでが現実で、そして幻想なのか? それを曖昧に残しつつ、筋は展開する。
読後感想・議論
議論1.現代作家の作品について
- れは読みにくかった。途中で挫折しかかった。理屈で読むからダメなんで、続きの夢をみている感覚で読んだらすらすら読めた。(複数シニア男性)
- 最後の場面は正常で、変わった作家ではなかった。( 〃 )
- 精神疾患の患者に医師が勧めて書かせ、そして癒えたという感じのストーリー。
- 精神疾患、幽霊、背後霊、もう一人の自分・・・・・・文学には当然登場するものだ。
→現実の筋立てを追うのに慣れたわれわれには若干の異質感あり、というところ。
議論2.『真鶴』の内容について
- 今生と他生=東京と真鶴が作品を貫くバックボーンと思う。
- 影の女の役割は?
- 重要な役割と思うが今一つ分からない。自分の反面人格の部分、夫の影の部分、夫の女の影など多様で混乱する。
- 影の女がいたから精神の破たんから免れた。
- 京(妻)は礼(失踪の夫)を殺したか?
- 妻は自分のせいで失踪した→自分が首をしめたと思いたがっていた。
十数年フタしていたその部分が、最近頭の中で外れて、混乱を来したと思う。 - 夫は死んでいるのか? 京が殺したのか? 女はいたのか? など結局何一つ分からずに終わる。
- 推理小説のように謎ときで読むとダメ。作者の思いは違う。
母と娘の遠近感、真鶴の船火事の意味などなどいくつも話し合った。 - 妻は自分のせいで失踪した→自分が首をしめたと思いたがっていた。
結論として、この作品はなかなか良いね、小説はやはり面白いねで終わる。