『ロック母』角田光代
本の紹介
作者の1992〜2005年までの7作品を収載した短編集。
時間の関係で『ゆうべの神様』『ロック母』に絞って読もう会で議論した。
どちらも「家族」がテーマ。『ゆうべの神様』は、高校3年生の女生徒が主人公。日常的に激しい夫婦喧嘩の中でさびしい日々を送る一人っ子とその彼氏との絡みが話の中心。両親の中に入り込めず、彼氏からも遠ざかられた彼女に残されたものは――。
『ロック母』は、妊娠して彼氏に捨てられ、瀬戸内の島に1人帰った主人公とその両親の物語。『ゆうべの神様』の10年後を見る思いだ。
読後感想・議論
①『ゆうべの神様』
- 面白かった。マリとガンジの家庭環境の違いがよく描けていた。(N)
- 神様の存在が今一で最後は消えてしまった。「ゆうべ」はどういうことか(SI)
- 主人公(娘)の家庭内のふるまいが子供らしくない。全体的に評価できない。(Sa)
- 子供時代のことがなく今の状況のみ切り取っている。回想シーンなどいれると厚みがでる。(Si)
- 放火する最後が分からない(Sa)
→最後はモヤモヤの結論であってもいいと思う(N) - 高みを感じない。とっつき易くはある。(Ni)
- 7編の中でワンセットに入れてみると、はじめて存在感のでる作品。
向田邦子と似た家庭描写と思った。(N)
②『ロック母』
短いがよくまとまっており、小説らしい良さが沢山あると高評価だった。
子を産みに10年ぶりに帰郷したら、母が様変わりしていた。
大音量のCDをかけて、人形の着物作りをしている母、家事を放棄している母に びっくりする娘――巧い設定と思うの声。
主人公(娘)も高校時代まではイヤホーンで大音量で聞いていた。
ここで母の今とがつながっているのも巧い。
母は呆けたのか、そうでないのかで議論。
母は外界を遮断したかったのだろう、そこの経過説明があると良かった。
自分を励ます母の態度は少し変だが、母親の健全さを保って心地よい。 この娘は生れ出た子供ともども親子3代、この島で穏やかに暮らすのでろうと、明るくなる。 ただ、生まれた子はその母(主人公)、さらにその母(ロック母)と同じ運命をたどるのだろう、そこに発展はみられない、というのが共通の感想。