『いきの構造』 九鬼周造
本の紹介
作者は京都大学哲学科の研究者。昭和5年初刊。普段何気なく使用している「いき」の本質について、哲学的に掘り下げ、分析を試みた書。作者がフランス留学中に稿を温めたというから、世界に日本文化の一端を紹介する目的があったと思われる。
読後感想・議論
- IKさんに、口火を切ってもらった。 岡倉天心『茶の本』、新渡戸稲造『武士道』を読んできて、これで出揃った思いだ。 他国では表せない日本固有の美意識を少しでも世界に紹介したいという時代のマインドを感じる。 「いき」という風俗的なものを抽象化して哲学の領域で解体料理している。
- 世話人が用意したレジュメに沿って議論。
議論1.内包的構造=「異性への媚態」「意気、意気地」「運命への諦め」の三本柱について
- イ.「知性」が抜けていると思う。
- ロ.「反権威的立場」が落ちている。 二つの有力意見あり。
議論2.この本を読む視点
- イ.その国独特の概念をとらえるための方法論(セオリー)として学んだ。
- ロ.観念論全盛の京都哲学の時代にユニークなテーマだ。
- ハ.西田哲学全盛の時にこんなバカなテーマで。これはシャレで、半分不真面目に読むべきだ。
吉原、不倫という陰の部分を「いき」だなんて、主婦が読んだら何だと思うか。 - ニ.作者の母(花柳界出身)に捧げた一冊と思う。 などにぎやかだった。
議論3.「いき」のイメージ
- イ.作品には花街のことしか出ない、江戸の吉原中心の話しか出ないのが物足りない。
- ロ.「武士はくわねど」という男のきっぷが抜け落ちている。
- ハ.女でも、背筋の伸びていてそれでいて色気、というのがあるはずだ。
- ニ.人物が背負っている背景が重要。
“粋な黒塀”にしても切られの与三郎の過去を我々が知っているから、あそこでいきが出る。 - ホ.いきは本で分るものではない。
議論4.いきと音曲
Niさんが歌舞伎18番より「助六」の長唄を録音し、ここでご披露。
リズム、伸ばし、切りなどなど解説してくれた。
議論5.本書は「いき」か
- 「いきではない」、が多数意見。
- Oさん、九鬼の別の随筆では、父の名代で葬儀に行った、父と自分、故人と自分などをぐずぐずと語らない。これは「いき」だと思った。