『出家とその弟子』倉田百三
本の紹介
- ご存じ倉田百三の代表作(戯曲)。作者25才の作。
- 宗教家、思想家親鸞と悩める生身の親鸞がともに描かれている。同時に、弟子唯円が、「信仰」と「恋愛」の挟間でもがき苦しむ青春小説である。
- 作者は1891年広島県の山間部の生まれ。少年期から亡くなる(52才)まで病気で苦労し、転地療養を重ねながら文筆活動を行った。
仏教と阿弥陀如来
最初にSさんから「阿弥陀信仰」について、大変分かり易い説明があった。
「他力信仰とは」、「他力信仰と一神教」、「お釈迦様と阿弥陀様はどちらが偉いか?」
「東南アジアの寺院と日本の寺院の違い」など、面白い説明と質疑が続いた。
読後感想・議論
- ・第一幕
- 左衛門の改心と親鸞の度量、正直さが印象的
親鸞の弟子で「慈円」と「良寛」が出て来るが、作者には狙いがあったのだろう。想像しても仕方ない。 - ・第二幕
- 親鸞が自分の思想について弟子や信者に語る部分がメイン。
偽言を嫌う、知識と知恵は違うなど心に沁みた。 - ・第三幕
- 親鸞の長子で勘当状態の善鸞が登場。京の遊女屋で放蕩している。訪れた唯円に父との間の苦しい胸のうちを吐露するところは当時の若者に受けただろう。
- ・第四幕、五幕
- 親鸞の愛弟子唯円が若い遊女かえでと恋に落ち、苦しむ場面。
当時の若者に熱烈に歓迎されたことだろう。 - ・第六幕
- 親鸞が90才で息絶えようとする間際に、善鸞が駆けつける場面。
「仏を信じるか」と問う今わの父に「分かりません」とあくまで自己を貫く息子。ここも世代間の対立に悩む若者に受けただろう。
この作品は、青年の抱えるさまざまな悩みを包摂し、キリスト教の色合いもある等々、仏教小説を越えた高い文学性があるとの意見が多かった。