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何でも読もう会

『李陵』中島敦

内藤、清水

本の紹介
  • 作者の代表作。1943年(昭18)、文学界に発表(遺稿)
    作者は前年の昭17年、33才で死去(喘息)。作品は中島と親交のあった深田久弥らの尽力で死後発表。題名も深田がつけた。
  • 中国前漢の武帝時代の3人の人物、李陵、司馬遷、蘇武を選び、3人がそれぞれの逆境をどのように捉え、生きていったかを語る短編小説。
  • 『漢書』が原典であり、古代中国・北アジアが舞台であるが、どの時代のどの国にも通用する、人間存在の物語である。
読後感想・議論
  • Nさん、Sさんより、事前に調べ、まとめたものの報告があり、議論が深まった。
    この作品の発表時期が重要との指摘があった。軍国主義一色、当局と世間の厳しい眼の中で書き上げ、発表したことの意義、勇気につきしばし議論が続いた。
  • 主人公が、蘇武や司馬遷ではなく、捕囚となり匈奴に靡いた李陵である点、大いに議論となった。
    単なる功名心しかない李陵、戦陣に紛れ込んだ女たちを無慈悲に殺す李陵が、捕囚ののち人間性にめざめ、成長していく過程が描かれており、作者の思いが伝わるとの意見だった。
  • 蘇武は能「砧」に登場するこれも有名な人物だそうで、能に詳しいSaさんから紹介。
  • 作品の文体については両論。

 難しい漢語が多く読みづらいとする意見と古代中国の雰囲気を勘案してあえてそうしたとの意見があった。

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