『蕨野行』村田喜代子
本の紹介
- 1994年発表
- 『遠野物語』に登場する「蓮台野(デンデラノ)」をモデルにした棄老伝承の小説化
60歳になった年寄りはワラビ衆として、ワラビ野の小屋で寝食をともにする。
毎日、2km離れた里に下り、仕事を手伝い、飯にありつく。
ワラビ野には里人は入山禁止。名前を捨てる。物言わぬこと。
強い年寄りは生き残り、弱い者は逝かせる。 - 老人の、人としての生き方を描く
レン、トセは人間としての矜持を持続。トメは飢えから逃れるため、食を断ち、死ぬ。
馬吉はあの世でレンと一緒になろうと考える。
レンの妹シカは山姥となって逞しく生きる。 - 生まれ変わり(輪廻転生)
レンは嫁ヌイのお腹の中の子になるのだと願う。
いずれもSiさんまとめより
鑑賞
- ①深沢七郎『楢山節考』との読み比べ
山に行く(棄てられる)主人公が明るい、健気。姥と嫁の信頼関係など、重要な共通点。どちらの作品が好きかは意見分かれた - ②嫁のお腹の子になるという「生まれ変わり」
締めくくりの重要部分であるが、この部分が必要かで鑑賞が分かれた。 - ③主人公の明るさ
「家族のために覚悟して」、いや「自分の美学を貫きたい」など鑑賞が分かれた。 - ④現在に繋がる「棄老」問題
生きている社会から切り離される現実。
この作品の今日的問題についても鑑賞。 - ⑤文体の面白さ
おばばよい、ヌイよい、の感情交歓が爽やか。文語調に加え独特の創作方言。
Oさん:「遠野物語」の関連資料 Iさん:小説の舞台を地図化 Tさん:感想まとめ
Siさん:両作品対比まとめ