グローバル大競争と企業のあり方
担当 山縣
問題提起
- ①グローバル企業や巨大国有企業に伍して如何に競争力、技術力、開発力を維持して行くのか。
- ②強い産業なくして国家は自立できるのか。
自立できねば独自文化の維持も不可能。目指すべき国家像を追求することも不可能。 - ③日本の社会は平時型。 短期決戦の戦時型には不向きか。
- ④多国籍企業の行く末は?
- ⑤日本型経営は放棄するのか。
日本式慣行、終身雇用、リストラ、非正規雇用の増加は正しい選択か? - ⑥一次、二次産業の復権 経世済民の理念は過去のものか?
- ⑦TPP参加の是非
- ⑧規制緩和の功罪
- ⑨イノベーションとは何か? 不必要な需要を作り出していないか。
- ⑩長寿企業に学ぶ 日本は世界一の長寿企業国。
- ⑪企業の上場は必然か。
このところの日本経済の苦境
- ①景気循環の不況局面にある。
- ②連続して大震災、タイ大洪水、最近の中国ショックに襲われ、回復が遅れている。
- ③円高
- ④これが大きいのだが、価格競争に敗れ、製品開発競争でも敗れて、国内産業が衰退。
企業は海外にシフトして国内設備投資を縮小し、つれて日本経済の成長が止まった。
貿易収支も赤字化し始めた。
アベノミクスの第三の矢 日本再生戦略;産業競争力会議(議長 安部首相)
このような日本経済の苦境から脱出しようと経済再生を目指す成長戦略の素案が6月5日に発表された。
1.)日本産業再興プラン
- 企業支援
- ①開業率を10%台に引き上げ、②設備投資を3年間で10%増の70兆円に、③20年までに黒字の中小企業を140万社に倍増
- 雇用・人材力
- ①20年までに20~64歳の就業率を80%に、②5年間で6ヶ月以上の失業者を2割減、③高度人材認定の外国人を増やす
- 科学技術・IT
- ①5年以内に技術力の世界ランキングで1位、②8年間で政府情報システムの運用費を3割圧縮
- 立地競争力
- 20年までに世銀のビジネス環境ランキングで世界3位以内
2.)戦略市場創造プラン
- 医療・健康
- ①20年までに健診受診率を80%に、②20年までにメタボ人口を08年度比25%減
- 農業
- ①20年までに農林水産物.食品の輸出額を1兆円に、②10年間で農業.農村全体の所得を倍増
- 観光
- 30年までに訪日外国人旅行者を年間3000万人に
3.)国際展開戦略
- 貿易
- ①18年までにFTA比率を70%に(TPPなど)、②20年に対内直接投資残高を35兆円へ、③20年までにインフラ輸出の受注を約30兆円に
なお、第四の矢に財政再建を検討しているとの報道がある。
また、参院選挙前につき先送りされた戦略案には、法人税の引き下げ、解雇規制の緩和、移民の受け入れ、混合診療の解禁、企業の農地所有の自由化、などがある。
サロン21における日本企業の再生戦略の検討
安部内閣、政府の日本経済再生にかんする目下の問題意識、危機感はこのようなものであるが、サロン21では、先述の問題提起に加えて、グローバル大競争の実態把握とそれに対する企業の対応、政府の対応のあり方を問うている。当会の会員は現場経験が豊かで、諸先生方とは違う視点でこの問題に対する貢献もできるのではないか。
これから会員間でおおいに討論を広げたいが、そのタタキ台として小生が重要視しているグローバル競争の例を述べます。
今後の戦略設定への進め方は、これらの競争項目ごとに
- (1)まず競争の実態を調査、把握する。(産業別、大・中小企業別)
- (2)次に、その現場が考えている改善戦略、あるいは、政府機関や大学への要望を聞く。
- (3)さらに視点をかえて、学会、識者、政府機関などからの意見、提言を聞く。
- (4)ライバルの国はどのようにやっているか。勝ち組の国は何をやっているか、を知る。
- (5)そのうえで、競争戦略の成案をまとめる。
これらの調査は時間をかけてもしょうがない。3ヶ月切りで、担当を決めて判る範囲で第一次の調査を纏めてしまう。新聞社の優秀な取材記者、若手の学者にお願いすれば相当の成果が得られるものである。
日本経済に危機をもたらしているグローバル競争
- 価格競争力
多くの産業が韓国、中国製品に価格競争で敗れているが、何故敗れたか、これは改めて研究する必要がある。相手の労賃が安いからだけでなく、製品価格の設定、機能、作り方などが異なっているケースが多い。太陽電池、リチウムイオン電池などの先端製品でも圧倒的な低価格をぶつけられている。まず「敵を知れ」からスタートするべきである。 - 製品開発力
最近売れているIPad、新TVなど後追いになっている。 - この1.2.の競争に敗れた/劣後した結果、日本の国内産業はかって輸出産業の花形であった生活雑貨、繊維品、鉄鋼製品、造船、次いで電気製品、半導体、最近ではTVが次々に衰退して、貿易収支が赤字定着になりかねない状況に陥った。
- 国内設備投資競争
①ライバルは最新鋭の設備を投入しているが日本のメーカーは20年以上前の旧設備で生産している。②半導体産業では台湾、韓国などのメーカーはひとつの工場にあらゆる新鋭製造装置、検査装置、工程管理システムをフルセットで投入してくる。日本は多数のメーカーが、資金力が不十分なため、フルセットを揃えられず、生産性で負け、生産の立ち上げが遅れてしまう。 - 特許獲得競争
サムスンはいまやコピーキャットではない。今後の製品開発計画にもとづき、その周辺特許をすべて押さえる作戦のように見える。 - システム、ソフトウェア競争
- 海外市場獲得競争
特にアフリカへの中国の進出(侵略)は脅威 - 通貨切り下げ競争
円高も米国の弱体感とその切り下げ戦略による処が大きい。 - 財政体質の改善競争
大借金体質の国は国力が落ちてくると市場で国債が売り浴びされるもの。これはその国の金融、資本能力に悪影響をもたらす。 - 金融、資本競争
これまで代々の短期政権はいずれもそれなりに再建戦略に手を付けたものであるが、政権交代とともにご破算となって立ち消えた。 しかし、この国民にとって最重要の再生競争戦略は与党も野党もそして省庁、学界、ジャーナリスト、国民も参加して調査、検討して成案をまとめ、政権が交代しても引き続き維持、発展させるべきものである。そのような行動組織を創れぬものか。
蛇足ながら、小生の夢を描きます。日本の技術力をもってすれば実現できると思います
- 世界で通用する価格の製品を、新しいもの作りシステム、自動ロボット多用で、24時間運転で製造し、日本の誇る新販売ネットワークにのせてグローバルに販売する。これができれば高齢者も生産に参加し続けることができる。(鉄腕アトム構想)
- 太陽電池を印刷技術で製造(低価格シート化)、農業ビニールシートハウスの天井をこの太陽電池シートで覆い、休耕地に水耕栽培工場を広げ、火力発電所などから回収したCO2で、24時間、365日 自動栽培する。(花咲ジイサン構想)
このプロジェクト、理化学研究所も生産技術研究所も参加せよ。予算も付けますよ。