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サロン21

食の自給

担当 大平 忠

問題提起
  1. ①食の自給は可能か→伝統食への回帰(輸入の過半は洋食関連の小麦、飼料、食肉など)、農民の確保、農地の確保、中山間地農業の復権、自然農法への回帰。
  2. ②消費者の選択→食の問題は国民全体の問題、生産者は数%のみで、全体の過半を占める消費者の判断と選択が農業の未来を決定する。例えば、品質か、価格か。
    国産への投資(国土・文化の保存)。
  3. ③食料の安全保障
    国民の生命に直接かかわる食の安定供給を海外に委ねるべきではない→食料の輸出規制は頻繁に起こっている→契約は破られるためにある。
  4. ④いただきますの精神の復活→食料の4割は廃棄している。
  5. ⑤農政の改革→減反は即刻廃止、無差別ばら撒きの廃止・・・・
  6. ⑥農協の解体的出直し。
  7. ⑦家庭料理の復権。
    食の外部依存は(外食、弁当、総菜等)核家族化や女子の社会進出と共に急速に増大。
作業1、スーパー観察記
  • ◎豊富・何でもある
  • ◎輸入品が多い―国産はコメのみ、ほぼ国産は野菜
  • ◎調理品(冷凍食品、弁当、総菜等)が多い
  • ◎安心できる食品は?―農薬、肥料、輸入品
  • ★売れ残りが山ほど出る
  • ★「食の自給」をどう考えるか
  • ★家庭の食事は大丈夫か
  • ★「食の安全」は大丈夫か
作業2、農業の推移と現状
農水省発表数字から
農業総生産額 1990年 2010年 対90年
  11,5兆円 8,1兆円 70%
内コメ 3,2兆円 1,6兆円 50%

★農業生産額の減少、なかでもコメの減少が大きい

農産物輸入額 2011年 5,6兆円
2013年 概算国産比率 国産/国産+輸入
とうもろこし 0% 牛肉 40% 飼料 23%
小麦 11 豚肉 52    
大豆 7 鶏肉 66 野菜 79%

★農業総生産額は、この20年で減少している。コメの生産は半減し、野菜、畜産も減り気味である。小麦、大豆、畜産飼料は大半輸入に頼っている。しかも、コメの生育に必要な肥料も殆んど輸入である。日本の食生活は、輸入品なくして維持するのは困難である。
食の自給、食料の安全保障をどう考えたらいいのであろうか。

カロリー自給率と農業生産額自給率

カロリー自給率(1987年度にスタート。中国、韓国以外では使われていない指標)

1980年 53% 2010年 39%

(国産+輸出)供給カロリー÷人口
(国産+輸入-輸出)供給カロリー÷人口

疑問:分母には家庭、外食、流通の廃棄分含む。分子に自給農家、非農家生産分含まず。畜産の飼料輸入分も含まれない。コメ生育には肥料が輸入されているが、カウントせず。

農業生産額自給率(総合食料自給率)(この数字は、白書にはっきり出てこない)
1990年 75% 2010年 69% 先進国3位(米、仏に次ぐ)

★カロリー自給率が年々低くなるので「食の自給」の危機と、政府・全農は言ってきた。
カロリー自給率で「食の自給」を論ずるのは的を射ていないのではないか。
式に無理がある上、これの50%を目標にしてもまったく達成は不可能である。

作業3、農村の推移と現状
農業就業人口 2000年 2011年 全就業人口
農業就業人口 3891千人 2601千人 63120千人
65歳以上 2058 53% 1578 61%  
75歳以上 659 17% 825 32%  
OECD 年令別農業就業人口 2010年
~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~
3% 2% 3% 9% 27% 56%
新規就農者数
2006年 81030人 2010年 54570人
39歳以下 14740人   13150人

★新しい担い手が育っていない、あるいは育ててこなかったことが明らかである。

農地の変遷
耕地面積の推移 1980年 2000年 2011年
(万ha) 546 483 456
耕作放棄地 12 34 40
内販売農家 7 11 12
自給的農家 2 6 9
土地持ち非農家 4 13 18

★1970年から始まった減反政策により、休耕田、耕作放棄地が増え、耕地の減少により、風景、生態系、灌漑設備、農村集落文化等の維持が困難となってきた。農業保護のための政策が、農村を壊していく原因になっていった。「食の自給」のためには、国として耕地の維持が必要の筈であるが、減反政策は何のためだったのか。

作業4、日本の農政の歴史―コメ政策の歴史
明治初期 殖産興業の第一歩は農業からの方針。
農業は進展した。人口の増加を賄う。
1912年 5000万人
1942年 食糧管理法 政府が生産・販売を統制管理
1945年 農地改革(不在地主、小作人の解消)
食管法体制は持続(コメ不足時代)
1962年 コメ消費ピーク
1965年 コメ生産過剰
収穫量上がる(品種改良)
省力化(機械化)
食生活多様化(コメ消費量減る)
1970年 生産調整始まる 減反政策始まる
(コメ高価格維持政策~今に続く 政府・全農タッグマッチ)
1993年 ウルグアイ・ラウンド
日本関税化反対・ミニマムアクセス米受け入れ
遅れて1999年関税化778%。現在77万t輸入の義務を負った。
コメ緊急輸入 250万t
(世界は輸出入量規制~関税化~関税撤廃へ。EU諸国 一斉に農政改革へ)
1995年 食糧法(食管法廃止)
政府管理は備蓄米・ミニマムアクセス米管理に縮小
農水省 規模拡大に取り組む
農家は土地を手放さず
(兼業農家、土地持ち非農家は転用売却利益を狙う)
農地の転用規制作動せず 農村秩序の崩壊 失われる農地
2006年 農水省 新しい担い手作りに取り組む(新しい担い手経営安定法)
2007年 民主党参院選大勝 ・・・農政混乱時代・・・
自民党 農水省を裏切る―バラマキへ戻る(先祖がえり)
2009年 民主党 戸別所得補償
2012年~13年 TPP反対運動(民主・自民農林族・全農)

★1970年以降のコメ余剰対策は、食料の安全保障を国内の食料自給と考えた結果である。輸入が全部ストップする危険はあるのか。そうさせない政策こそが食の安保ではないのか。1993年、ウルグアイ・ラウンドの結果と、コメ緊急輸入の意味を噛みしめ、安部内閣が今掲げる農政改革にその時点で踏み出すべきであった。20年遅れた。失われていく農地は大問題である。安易な耕作放棄、規制をくぐる違法転用、売却利益だけを狙う偽装農家は、農村を崩壊させ、規模拡大を阻んできた。

安部内閣 農業の成長戦略 TPP参加決定
  • 農業・農村所得 10年間で倍増(3兆円から6兆円へ)
  • 地集約・大規模化(農地バンク設立)により、コメ生産コスト40%ダウン
  • 農林・水産品・食品の輸出を、10年間で4500億円から1兆円へ
  • 生産者が加工や販売まで手掛ける「6次産業化」を官民ファンドで推進

★聞いたことがあるものばかりである。具体的な実行策が、まったく分からない。

作業5、食の外部化 健康な食事の危機

「中食」が急速に増加。スーパー、コンビニ、宅配(老人向け)―(外食は横這い)
調理食品……冷凍食品、真空パック入り食品、弁当、総菜、
原因――核家族化、女性の職場進出、単身者の増加、高齢化(老人独居)、一般家庭も。

食事の外部化率 総食費に対する外食+中食の割合
1975年 28% 2005年 43%

★懸念すべき傾向 栄養の片寄り――国民の健康に対する懸念
一人当たり摂取量 野菜減少、肉類、乳製品、油脂類が増加

原料―輸入品が多い傾向(調理食品など、工場が外国、原料が輸入品の傾向大)
子どもが母親の料理(母親の苦労、愛情)に接することが少なくなる。
日本料理の良さが欠落―食器の未使用、盛り付けなど料理の美しさが無くなる

作業6、食料・食品の廃棄

2013年6月 NHKスペシャル「食の廃棄」から
家庭では1食分 食べ残し27%、直接捨てる19%、余って捨てる54%
製造~小売り 商品入替え34%、納期切れ34%、売れ残り、破損他32%
家庭 200万t~400万t 製造~卸売~流通~小売 300万t~400万t
合計 500万t~800万t(1000万t超える数字もある)

今後の日本の農業政策提言
  • 「平成の農地改革」
    農地の規模拡大、農業のための農地の利用
    減反政策の即時廃止、農地転用の厳格化(EU並み)(チェック機関の設置)
    「平成検地」の実施―農地管理の基本台帳作り
    新しい担い手造り―農業教育の充実、海外市場探索、海外耕作
    全農の機能別解体(作物別等)農民のためのサービス機関へ 情報、開発(品種、技術)
  • カロリー自給率に代る指標
    総農業生産額を第1に打ち出し、別途作物別自給率(目標と対策)を作る
  • 食料の安全保障
    適正な輸入の常時非常時確保能力(商社の力)農地の維持拡大
  • 健康な食事の運動
    1977年 米「マクバガン・レポート」のような健康な食事指針の作成
    厚生労働省検討開始 6月24日NHKニュース
    「健康な食事」の基準を作り、徹底させようという作業が始まった。頑張れと応援。
    自然農法、有機農法の研究開発 (輸入依存の化学肥料や農薬のリデユースにもなる)
  • 食料・食品の廃棄リデユース運動
    3R運動の一つとして.
    リユース、リサイクル、リデユース 賞味期限3分の1ルール見直し
    もったいない運動 家庭・学校・職場 教育、食育

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