第九回 議事録「行政・公務員改革」
平成26年1月21日
1.最初に富岡さんから配信済みの資料とレジメに基づいて、下記のごとくに問題点を的確に整理した説明があった。
<行政・公務員改革>
役割分担とは :官VS民、中央VS地方
公務員制度問題とは:制度疲労
<財政再建-議論済>
<税制再建-別途議論>
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①行政改革(統治機構改革)-行政執行の仕組み
国家運営方式vs企業経営形態
*官、民の差=自動淘汰の有無(市場淘汰、破産退場)
(稼いでからつかうか、つかってから税とるか)
現行制度(議会制民主主義、都道府県制等)に改変の余地無きや企業運営方式、組織から学ぶところはないか*資料-行政機関の種類と従事公務員の数
公務員(約398万7千人)
国家公務員(約94万5千人)
地方公務員(約304万2千人) -
②公務員改革(公に尽くすエリートの再生)
問題提起
- ●なぜ叫ばれるのか;
官僚独裁、省益優先、天下り、過優遇、無謬性、前例主義、外郭団体増殖等。 - ●対象は誰-すべての公務員ではない、霞が関の行政官僚批判書氾濫
- ●何故そうなるのか考えよう
採用、任用、昇進、定年、身分保障-労働権制限→これらに問題なきや - ●どう変えればいいか
- ●それを誰がどこでやる
- ●なぜ叫ばれるのか;
2.引き続いて参加者17名による自由な討議に入り、以下のような意見が出された。
- ▼霞が関を批判する本は実に多数出ている。
- ▼官庁はつぶれず残るところが問題だ。
- ▼公務員はつぶれる心配のない組織に安住し、身分保障があり、民間より手厚い年金制度を享受している。
- ▼組織を変えればよくなるのか→土光改革以来何度も行政改革は行われてきている→成果は上がっていない。橋本内閣で大きな組織改編を行ったが、実質の効果はない。
- ▼省が違えば別会社→省間の人事交流はなぜできないのか。
- ▼つぶれる心配がなく、競争原理が働かないので自浄作用が働かない。→政策や成果・効率が見えるような仕組みを導入すべきだ。また。見えた結果については責任も取らせるべきだ。
- ▼官邸の権限を強化すべきだ。
各省の超エリートを集め、省の垣根を越えた強固な官邸官僚組織を作るべきだ。→従来は大蔵省が実質的にその役割を担ってきていた。
第1次安部内閣で練られ福田内閣で成立した国家公務員改革基本法では、省から独立した国家戦略スタッフを考え、民主党ではそれを下敷きに国家戦略室を設けたが名のみに終わった。名実備わった実力者集団の国家戦略局を設けて、5年後・10年後・30年後の国家戦略を検討すべきである。省も他の部局から独立した戦略検討の部署を持つべきであろう。
- ▼シンガポールなどは官民の人事交流によって成果を上げている。
- ▼米国では多数のシンクタンクが競争しており、官への人材供給源となり円滑な官民交流が実現している→ウォール街の人材が大挙して政府に入り利益誘導するなどの悪例もあるが。
- ▼成果や仕事の内容を計量化すべきだ。
- ▼官僚は国家百年の計を見据えるべき立場にあり、短期の成果主義の導入には慎重であるべきだ。
- ▼成果を見える化し、また、監査する第三者機関を設けるべきだ。
- ▼明治以降、戦後の復興期を含めて日本の官僚制は旨く機能してきたが、バブル崩壊後はモラルが低下した。
- ▼戦後、半官半民の組織で働いた経験から言えば、諸外国の官僚を相手に、日本の官僚と民間が手を携えてよくやってきたという実感がある。
- ▼官僚は政治家との関係しだいのところがある→我慢していればいつか大臣は変わるとの風潮もある。
- ▼官僚はよくやっているが政治家が悪い。
- ▼政治家には立法能力がなく、また立法を支援する体制も整っていない。
- ▼政治家のレベルが低くて官僚を使いきれない。
- ▼近年、政治家も官僚も使命感が薄れている。
- ▼中央集権の必要性が希薄になっている移行期で使命感が薄れている。
- ▼官僚は試験の成績はよくても優秀ではない→保育所不足など未解決の問題がいつまでも放置されている。
- ▼官僚の人事評価→短期での成果は評価が難しい一方で、キャリア重視の習性が残っている。
- ▼キャリア、ノンキャリの区別は撤廃すべきか?
- ▼過度の官僚バッシングで民間とのコンタクトがなくなり、生きた情報の入手や優れた民間の経営手法などが学べなくなっている。
- ▼官僚を束ねるリーダーが大事だ。よいリーダーを選べる選挙制度、政治のあり方を考えるべきだ。→安倍内閣になって官僚はやる気を出している。
- ▼江戸時代も中期になると経済成長が止まったが、そこで南北に奉行所を設置して競争させた→現代も競争原理をうまく導入すべきだ。
- ▼行政を大括りする道州制の方向はよいが、地方公務員のレベルが低いので地方分権は逆効果となる懸念がある。
- ▼地方自治体の自立を叫ぶが、地方にその能力が伴っているのか
- ▼女性を軽視してきた。女性を登用し社会が女性を活用する施策をもっと講じるべきだ。それが、官僚の活性化にもつながる。
最近の安部内閣の公務員制度改革への姿勢
昨年末の国家公務員制度改革関連法案では、大幅に第1次安部内閣当時の姿勢が後退している。天下りでは民主党が認めた現役出向をそのままにし、内閣人事局の設置では、人事院と大蔵省(給与面からの)の介入を存続させている。さらに、国家公務員給与の7,8%減額を4月から元へ戻すことにした。
アベノミクスの成功までは政権保持のため安全運転に徹しようとしているのかもしれないが、たいへん気懸りである。減反政策廃止の骨抜きと併せて、いずれ刀を抜くのであればいいが、このままでは6年前となんら変わらない。
結いの党、維新の会、みんなの党など反対の声があるものの、メディはなぜか大きく報道していない。
3.上記各意見の総括
明治以降の官僚制度については軍部独裁による国家破綻を来した時期を除けば、国家の勃興または復興期で目標を持ちえたため相対的に旨く機能してきたとの認識が多数を占めた。同時に近年、バブル崩壊、経済低迷により目標を失って官僚のモラルが低下していることを憂うる意見が多く出された。
硬直化を防ぐ人事制度、競争原理の導入、成果を国民の目に分かるように示すことなどが提言された。また、官僚を使う立場の政治家の質の低下、即ち票集めの就職運動に走り、単なるポピュリズムに走る国家的使命感の欠如した政治家が輩出していることを問題視する意見が相次いだ。
以上